Web2.0とは、集合知を利用するために、Webをプラットフォーム化すること。

CNET Japanで「Web2.0ってなんだ?」という特集がスタートしている。
その第1弾の記事が、「Web2.0:次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル(前編)」で、11月2日の公開以来、現時点で29件のトラックバックが付いている。
CNET Japan内の、ブロガー注目記事ランキングで2位である。

記事は、Web2.0の概念を定義したティム・オライリーの論文であり、言葉が先走っているWeb2.0の定義を明確にしようというものだ。
公開されている前編では、2つのキーワードが挙げられている。

1つは、「プラットフォームとしてのWeb」で、その教訓として、大量のデータを処理するアルゴリズムを導入し、そのサービスを末端ユーザーまでが自由に使えるようにすることを述べている。
重要なのは、末端ユーザーまでを対象とすることだろう。
大量データ処理は、そこから導出されるデータ自身の価値を向上させるし、末端ユーザーまでを取り込むことで、処理すべきデータは必然的に大量となる。
大量なデータは、適したアルゴリズムでなければ効率的に処理できない。
Web2.0に取り組む企業は、データそのものを集積することよりも、大量のデータを処理するアルゴリズムにコンピタンスを見出す。
そのアルゴリズムが魅力的であるほど、データを持ち寄るユーザーも増えていく。
Webをプラットフォームと捉えることは、単に技術的な云々ではなく、(データ処理アルゴリズムを要とする)プラットフォームに集まったユーザーが、その上で、様々な活動を展開していく…、そういうプラットフォームだと捉えた方が良さそうだ。

もう1つは、「集合知の利用」である。こちらにも、教訓があって、ユーザーの貢献がもたらすネットワーク効果が市場価値となるというものだ。
プラットフォームに集まったユーザーの数が、プラットフォームの価値と魅力を、増幅させていく。

ところで、プラットフォームは誰が提供するのだろう。
AmazonやGoogle、(日本では活動していないが)eBayといった、サービスをオープンAPIとして提供した企業が真っ先に挙がる。
他にも、WikipediaやSourceforgeといったオープンソースコミュニティ(及びその活動をサポートする団体)もあるだろう。
こういった企業やコミュニティは、「何か」を提供するのではなく、「何かするための何か(=プラットフォーム)」を提供する。Amazonについて言えば、それが本業につながっている。

Web2.0といえば、必ず名前の挙がるブログはどうだろうか。
ブログは、主に個人が作成するデータ(日記かもしれないし、上質なジャーナリズムかもしれない)を、効率的に発信するためのアルゴリズムであるから、正にプラットフォームだ。
しかし、ブログには、そのプラットフォームを一元的に提供し、利益を一手に享受する企業は存在しない。

CNETの記事に立ち戻る。
“Web 2.0の本質が、集合知を利用して、ウェブを地球規模の脳に変えることだとすれば、ブロゴスフィアは絶え間ない脳内のおしゃべりを、すべてのユーザーが聞いているようなものだ。”
“主流のメディアは特定のブログを競争相手と考えているかもしれないが、この競争の手ごわいところは、相手がブロゴスフィア全体である点にある。これは単なるサイト間の競争ではなく、ビジネスモデル間の競争なのだ。”

この前編の記事で挙がっている2つのキーワードを組み合わせてみる。
「Web2.0とは、集合知を利用するために、Webをプラットフォーム化すること。」
そういうことかもしれない。
そうした流れを敏感に察知し、ビジネスモデルに組み入れたのがAmazonでありGoogleなのだろう。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。