小樽でも考える。

昨日に引き続き、今日は小樽で考えてみる。
課題は、昨日、積み残しとなったアーキテクトとは何か、そしてそれを私がやるというのはどうか?ということである。

(昨日に引き続き、超長文注意。)

今日、羊ヶ丘展望台に行って、クラーク博士の像と、有名な”Boys be ambitious”を見た。
私が、専業アーキテクトになるというのなら、それは大志だ。
羊ヶ丘展望台では、人それぞれの大志を紙に書いて、それを預かるというサービスをやっているようだった。普段の私なら、多分、書く。実際、随分迷った。しかし、書かなかった。
書かなかった理由は、まだ迷いがあるからだ。
今日、ゆっくりと考えてみて、その迷いは解けるだろうか。

具体的な技術のことは置いておいて、まずはアーキテクトとは何をする職種だろうか。参考文献にあたるとすると、まずはJAVA PRESS Vol.43の「J2EEアーキテクチャ設計入門」において、その第1章「基礎知識編~J2EEアーキテクトってどんな人?」が詳しい。
それによると、アーキテクトとは「技術面を機軸とし、納期、コスト目標を達成してプロジェクトを成功に導く役割」とある。
ざっくり言えば、様々な要件を実現し、プロジェクトを成功させるために、その方法を技術面で示して、前に進めていく仕事を専門にやる職種ということか。

この企画全体の著者である平林氏の思いは、基礎知識編の最後で語られている。引用しておこう。

“日本でITアーキテクトという言葉はやっと拡がりを見せ始めたところですが、これから、ITアーキテクトがさらに認知され、オーソライズされた資格が出てくれば、ITアーキテクト設計事務所なるものを開所して、生涯ITアーキテクトになるということも可能だと信じています。なぜならITアーキテクトはだれでもなれるわけではなく、それなり技術~経験が必要になるからです。”

かなりの専門性が要求されるし、プロとして、個人名で評価されるような職種のようである。(そうなれば良いな、ということだが)

もう少し、アーキテクトとは何かを考えようと思って「プログラマの本懐~アーキテクトという選択」という本を買ってみた。いやはや、小樽で技術書を買うとは思わなかった。

まだ、最初の方を少し読んだだけだが、アーキテクトの定義としては、JAVA PRESSの記事と大差なさそうだ。
しかし、そのタイトルや前書きを見たときに、私が職種としてのアーキテクトになる決意を鈍らせている原因を見つけた。
それは、「プログラマの次のキャリアとしてのアーキテクト」という位置付けだ。

私は職業プログラマの経験が少ない。だから、私にとっては、プログラマの次のキャリアではない。
職歴で多いのは業務SEかプロジェクト管理。あとは、フレームワークや開発プロセスといった標準化の仕事が同じくらい多い。
そんな、2つに分けられる職歴から、私が今、アーキテクトになると言っているのは、後者の経験があるからだ。

前者より後者の経験者の方が希少性が高い。
それだけ、会社としても、おそらく業界としても、人手が足りない分野と思われる。
せっかく少しは経験があるのだから、それを極めるのは悪くないという考えもある。
それは否定しない。人に必要にされるのは、大切なことだ。

私は、なぜ、アーキテクト的な、標準化の仕事をしてきたのだろう。
そう考えた時に思いつくのは、それが私の十八番のネタであり、上司や仲間に対して、散々言い続けて来たことだ。
システム開発における開発プロセス、アーキテクチャ、フレームワークの必要性を語らせたら、はっきり言って長い。(オブジェクト指向についても、かなり長い。)
フレームワークベンダーでの経験とか、かなり早いうちからフレームワークに触れてきた職歴のせいだろう。
あとは、自分が理路整然とか理念が好きであり、力技とか人海戦術が嫌いという、いかにもアーキテクチャとか標準化が好きそうな性格も大きいと思う。(ちなみに、理路整然にするための力技?も、かなり嫌いだ。理路整然なら、簡単になると信じているのだ。)

そんな私の基本的な視角は、PMとかSEのそれと同じだろう。
だからプログラマ視角とは違う部分もあるかもしれないが、アーキテクトが活躍する分野の必要性については、強く認識しているつもりだ。
そもそも、アーキテクトなら、PM的に、広範を見渡す力は絶対に必要だろうから、少なくともそれは損にはなるまい。

必要は発明の母というが、必要な理由さえ分かっていれば、あとは、その必要を満たすための能力を身につけるだけである。(それが、何より今まで私が手を抜いて来た部分であり、大変なことだろうと理解している。)

そろそろ、まとめの時間だ。
どうしたものかと考えたが、今回の北海道の旅路も終盤だし、これからの私のために、ミッションステートメントを1つ作って、まとめとしよう。

「私は、コンピュータによる人類の能力増大を世界にもたらすため、プロフェッショナルなアーキテクトとして、進歩する技術を価値に変える方法を提供し、実際の価値を生み出すことに、一所懸命に取り組みます。」

と、いったところだろうか。少し長いような気もするが、熱い気持ちは詰め込めたと思う。
人類とか世界とか、少々、おおげさな方が、こういう時には良いものだ。
あとは、東京に戻ってからだ。

2006/05/01、ヒルトン小樽1122号室にて、Jazzを聞きながら。

喜久屋書店(「プログラマの本懐」を買った書店)

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この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。