プロフェッショナル進化論 「個人シンクタンク」の時代が始まる

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著者は、これからのプロフェッショナルは単なる知識労働者ではダメで、個人シンクタンクとして、新たな智恵を生み出し、未来を予見し、何を目指し、何を為すべきかを提示し、それを広く伝えて、変革の動きを生み出さねばならないと説きます。そして、個人がシンクタンクとしての働きを持つために、ネットをどう活用すればよいのか、それを解説したのがこの「プロフェッショナル進化論」です。

そのために、著者は6つの戦略を提示しています。(少しですが、私なりの言葉に変えています。)

  1. ネットをコンセプトベースにする
  2. ネットにパーソナルメディアを持つ
  3. 自分のプロフェッショナルフィールドを持つ
  4. アドバイザリーコミュニティを持つ
  5. シンクタンクをムーブタンクに進化させる
  6. パーソナリティメッセージを感じさせる

「プロフェッショナルになるためのネットの活用法」(と、まとめるには若干気が引けますが)を取り上げた本はあまたあります。それを6つの戦略というコンサルタントらしい表現で、方向性を示したというのが、この本の存在意義ではないでしょうか。
この本で概略をつかんで、その後のことは、以下で数冊を取り上げるように、他の本からの提案を組み合わせていく。それが良さそうです。
第1の戦略「ネットをコンセプトベース」にする方法として、「サーチ」と「ウォッチ」を使い分けること。そこから何かのつながり(物語、コンステレーション)を感じ取ることを挙げています。このことについては、佐々木俊尚著「3時間で「専門家」になる私の方法」と、ほぼ同じようなことが述べられています。「3時間~」は、それに特化した本で、より具体的なので、「プロフェッショナル進化論」の後に読むとよいのではないでしょうか。
第2の戦略「ネットにパーソナルメディアを持つ」については、このブログで以前に紹介しました。→「骨太なブログを作りたい」
大切なのは、「良き読者に、良き影響を生むようなことを書く」ということ。
また、確固たるパーソナルメディアを持つことが出来たとすると、その読者コミュニティを「アドバイザリーコミュニティ」に進化させるというのが、4つ目の戦略にあたります。
第3の戦略「自分のプロフェッショナルフィールドを持つ」。私にとっては、これこそ長年のテーマ。
プロフェッショナルフィールドを定める、広げるために、

自分の仕事を「縦」ではなく「横」にしてみる。
「テーマ」(主題)で見るのではなく、「メソッド」(方法)から見る。

ということが提案されています。私が、「やっぱり行政書士をやりたい」において、

話を理解する速さ、それを抽象的にまとめる、そしてそれを人に分かりやすく伝える。そういうことが得意なのだと思っている。そもそも、そういうことが好きなのである。

という視点を持つに至りました。これは、自分の仕事を「縦」から「横」で見た一例と言えるでしょう。
個人が一人のプロフェッショナルとして仕事をすると、他のプロフェッショナルとコラボレーションすることもあります。その場面で、その個人が、真のプロフェッショナルであるかが問われます。実は、この本で最も手厳しいと思ったのが、この部分。

下段者には上段者の力が分からない。
「熟練プロフェッショナル」からは、恐ろしいことに、「机上プロフェッショナル」の力量は「透けて見える」。
なぜ、力量が「透けて見える」のか。
「言葉が軽い」からである。

もちろん、理解はできます。しかし、これからプロフェッショナルになろうという私などは、最初は机上プロフェッショナルにしかなれないのです。
「ウェブ進化論」で取り上げられていた、

「ITとネットの進化によって将棋の世界に起きた最大の変化は、将棋が強くなるための高速道路が一気に敷かれたということです。でも高速道路を走り抜けた先では大渋滞が起きています」

という高速道路論と似ているように思いました。
第1、第2の戦略は高速道路に乗る方法。敷かれた高速道路でたどり着くのは、プロになる一歩手前くらいだそうです。その後、その道で真のプロフェッショナルになるには、Vantage Pointでの経験や、そもそも対象を好きで仕方ないという熱意が必要です。もしくは、学際、業際を見出して、けものみちに進むのか…。この辺は「ウェブ時代をゆく」が参考になるのは、言うまでもありません。
第5、第6の戦略はスルー。まだ、自分的にはそこに至ってないためか、あまり引っかかるところがありませんでした。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。