日本IBMを下請けが提訴へ – これがSI業界の実態といえば実態

あまりの悲惨さに他人事とは思えず、身震いしてしまいました。しかしながら、大小を問わず似たようなことは、いつ何処でも起きているのでしょう、たぶん。自分がこのようなことに係わらないようにするために、メモ書きします。
日本IBMを下請けが提訴へ 七十七銀の案件で追加費用を得られず経営破綻 – 工藤探偵事務所

ポイントが16にまとめられているので、要点が理解しやすい。
ざっと読んでみたところ、まぁ、ひどい案件だと思うけど、ありがちでもある。

日本IBMが酷いというのは言うに及ばず、七十七銀がJCEと対面するのを断ったというのもどうかと思う。
日本IBMの要件定義で七十七銀としても相当おかんむりだったのだろうとは思うが、それでJCEが作ったシステムを実際使うことになるのは自分たちなわけで。

いや、おそらく七十七銀の担当者は情シスだろうから自分が使うわけではないだろうけれども、少なくとも問い合わせ対応はやらされるハメにはなるのだろう。
それなのに、なぜ対面を断ったのか?ということが、まったく解せない。いろいろあったんだろうけどね。情シスの担当者は会おうと思ったけど、上の方がメンツにこだわったとか・・・。分からないけど。

請け負った仙台のJCEというのは、ここの会社だと思うけれど、社員数220名、資本金4,900万円か。私が前に勤めていた会社のSI部門だけを切り出したら、ちょうどこれくらいになるのかな。

会社概要に売上高が書いていないから、いまひとつ規模が見えないけど。物販やっているかどうか次第だけど、それがなければ20億円規模ってところかな。それで1案件で4億円の赤字じゃたしかに辛いだろう。

開発規模が7.5倍になって4億円の赤字ということなので、元々の受注金額は7,000万円で、100人月くらい?大きめだけど、会社規模から見ても極端に大きい案件というわけでもない。まぁ、蓋を開けてみたら5億くらいいっちゃったんだけど。「日本IBMは、JCE見積もりを抑えるように何度も言った」ということなので、本当は1.2億くらいの見積だったのだろうか?いずれにせよ、社長決裁が必要な規模かなぁ?(その辺は会社によって違うから何ともいえないけど)

いろいろ議論した結果、日本IBMとの付き合いもあるから断りきれなかったのだろう。
でも、こうやって規模を見てみると、東北最大の地銀であるという七十七銀にせよ、日本IBMにせよ、大きなシステムという感覚はなかったのではないだろうか?一方で、JCEとしてはそれなりに大きな案件だったのだろう。

その辺の会社規模にまつわる規模観の差も、この案件に影を落としたような気がする。
いずれにせよ、ここまで極端な事例は少ないとしても、これがSI業界の実態といえば実態。

はてブで「中小土建屋が潰されるときとまったく同じ構図」というコメントが寄せられているが、これほどまでにSI業界は土建と同じ構造だってこと。システム開発はよく建築と比較されるけど、そんなところまで真似しなくて良いってのにね。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。