スマートフォンが引き出すTwitterの魅力

このブログでも度々触れているように、私は六本木ライブラリーのコミュニティメンバー(ふつうの会員のことをそう呼ぶ)です。六本木ライブラリーでは、いろいろとコミュニティ活動が行われていて、私はRoppongi Learning Communityに参加しているのですが、8月からはiPhone/Androidトレンド研究会にも参加することにしました。(Androidユーザになったし)

その8月の定例会のテーマがTwitter。課題図書ならぬ課題Webページとして、コミュニティに参加されているITジャーナリスト林信行さんによる、第5章 iPhoneで始まるソーシャルメディア × リアル革命 — Twitterで見えた新しい世界:ITproが指定されたので、読んでみました。

林さんによると、「情報洪水の中,むしろ重要になりつつあるのは,多すぎる情報の中からrelevancyの高い情報(重要な情報,自分に関連のある情報)を浮き立たせる手段」であるとのことで、重要になってくる3つの視点(軸)として、下記のように述べています。

これから3つの軸が重要になってくると考えている。まず1つめは「時間軸」だ。大半の人は,昨日起こった事件より,今,まさに進行中の事件の方に関心が高い。2つめは「親密軸」だ。多くの人は,どこの誰か知らない人に起こった事件よりも,自分の知り合いが関わっている事件の方に関心が高い。誰かが書いたお薦めレストランの情報よりも,友達に「ここがおいしいよ」と言われたレストランに興味を持つ。そして3つめは「空間軸」だ。どこか遠くで起こった事件よりも,自分が住んでいる街や職場の近くで起こった事件の方に関心を持つ。

Twitterは、時間軸はタイムライン、親密軸はフォローとして標準的に実装されています。空間軸はTwitter標準というわけではありませんが、iPhoneやAndroidといったスマートフォン、および普通のケータイで使用できるTwitterクライアントでは、GPS機能と連動した現在地情報の付加が出来ることが多く、その情報を用いて集約的に表示する外部Webサービスが展開されています。たしかに、Twitterは林さんのいうrelevancyの高い情報浮き立たせる手段として、適したものといえるようです。

もともと、TwitterはPC向けのサービスです。だから、空間軸が標準で考慮されていないのは頷けます。PCにGPSモジュールが入っていることはほとんどないし、ノートPCを持ち歩いて使っているとは限りません。
しかし、以下の特徴から、Twitterとスマートフォンの出会いは起こるべくして起こったと言えます。

  1. TwitterにはAPIが準備されており、スマートフォン向けのアプリケーション開発が可能
  2. 140文字という制限が文字入力に難のあるスマートフォンにはむしろ好適
  3. 考えをまとめて書くブログと違い、思いつきをつぶやくTwitterは、いつでも使える端末との相性が良い

そして、スマートフォンの多くがGPS機能を持っているわけですから、Twitterが空間軸を手に入れるのも必然だったのですね。

では、時間軸と親密軸については、どうでしょうか。

時間軸については、「いつでもどこでも使える」というスマートフォンの最大の強みが、重要な意味を持っています。スマートフォンを片手に、目で見たもの(写真を付けることも多い)、耳で聞いたもの、いま感じていることなど、いつでもどこでもつぶやくユーザは多いのです。スマートフォンによって、時間軸はより濃密に構築されていると言えるでしょう。

親密軸についても、スマートフォン効果があるように思います。
私は、スマートフォンでTwitterをやっていると、ケータイメールをやっているような感覚に陥るのです。(ケータイメールが最も親密性の高いITツールであることは、言うまでもないでしょう。)
Twitterでつぶやくというのは、全世界に向けて情報発信していることと等しい(非公開にしていなければ)のに、なぜそういう感覚に陥るのでしょう。まず、Twitter自体が提供する、フォロー関係が作り出す緩い閉鎖性があります。そして、何よりスマートフォンでTwitterをやるという行動が、ケータイでメールをやり取りするという行動と、非常に似ている(体の動き的に)ということを見逃してはいけないでしょう。

ところで、Twitterとケータイメールの類似については、もう一点、付け加えたいことがあります。
私の友人が、私の薦めでTwitterを始めました。しかし彼は自分の書いたものをオープンにすることを避けたいと思っているので、自分のつぶやきは非公開にしています。というか、全くつぶやきません。そして、彼は私にDirect Messageを送ってくるのです。
彼のTwitterの使い方は、ケータイメールのそれと大差ありません。おそらく、私がケータイをAndroidにしたものだから、imodeメールを送るよりTwitterでDirect Messageした方が良いと判断したのでしょう。(Androidに新着iを入れてあるから、imodeメールも読み書きできるのだけど。)
これは極端な例ですが、Twitterがケータイの公式サイトとして本格的に提供されるようになり、ケータイメーカーもTwitter対応を売りにした機種を展開するとなったら、ケータイメール的に使う人も出てくるかもしれません。少なくともケータイとスマートフォン、PCの垣根は越えていくのですから。Twitterの用途には、まだまだ伸びしろがあるようです。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。