民主党政府のこの決定は違憲ではないのか

民主党は18日、政府・与党の二元的意思決定を一元化するため、議員立法は原則禁止し、法案提出は原則、政府提案に限ることを決め、同党所属の全国会議員に通知した。政策決定がスムーズになり、族議員の誕生を防ぐといった効果が期待されるが、政治主導が不完全なままでは従来の政府見解にとらわれて自由な立法活動が阻害される可能性もある。

族議員という存在を排除したい気持ちは分かるのですが、この決定は、あまりに憲法を無視したものと、いわざるを得ません。
何が言いたいのかというと、憲法41条にある「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」という条文に反しているのではないかということです。
ここで「唯一」という言葉の意味には、「国会中心立法の原則」と「国会単独立法の原則」の2つがあるとされています。
「国会中心立法の原則」は、国の行う立法は国会によってなされなくてはならないということです。この例外は衆議院・参議院が各々で制定できる議院規則と、最高裁判所が制定できる裁判所規則があるに過ぎません。内閣も政令や省令といった行政立法を行いますが、これは国会の定める法律の委任がある故できるのです。
そして「国会単独立法の原則」。これが今回の民主党政府の決定が抵触するのではないかと思うのですが、国会による立法は国会以外の他の機関の関与がなくとも、国会の議決のみで成立するというものです。
たしかに、今までの自民党政府にせよ、政府が提案する法律が大多数でした。
三権分立において行政権(無論、立法権ではない)が与えられた内閣(政府)が、法律案を提出することの可否について、そもそも議論があります。
通説では、行政に関する情報を多く持つ内閣が法律案を作る必要性が認められること、国会による審議や表決を経るので許容できるという理由によって、内閣による法律案の提出は、国会単独立法の原則には反しないとされています。
しかし、それはあくまで内閣による法律案の提出が違憲ではないという確認であって、法律案の提出を内閣に限定することまでを認めるものではないと考えます。
もちろん、この決定が影響を与えるのは民主党内および連立を組む社民党、国民新党の範囲に過ぎません。野党である自民党などが議員立法の法律案を出すことを制限するわけではないことは分かります。
ただ、いくら今後の政権運営をスムーズにする、族議員による弊害を防止するという実利が期待できるとはいえ、突然このような決定が出てくるとなると、民主党の方々はどの程度、憲法や三権分立といったものを理解しているのか、理解しているとしてもあまりに軽視していないかという疑問が生じるのです。
三権分立という国の統治の根幹をなす仕組みについての意志決定なのですから、与党内のこととはいえ、もう少し議論すべきではないかと思います。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。