クラウド(cloud|crowd)が生活を変える

昨日、丸の内のパソナテック本社で行われたクラウドハックセミナーに参加してきました。講師はもちろん?Lifehacking.jpの堀正岳さんと、ライフハック心理学の佐々木正悟さんです。

参加者は36人ですが、iPhoneは大多数の人が持っており(私はXPERIAですけど)、メモの取り方は、紙とiPhoneとiPadとPCで1/4ずつ分け合っている感じでした。

最初にアンケートがあって、会社でクラウドの使用を禁止されている人が半数、仕事をノマドでやっている人は1人?。現実はなかなか厳しいですね。
(講演中、出版社の中でDropboxが禁止になっているところがあるという話があり、堀さんが憤慨していたのが印象的でした。Dropboxのような定評のあるクラウドのセキュリティと、ふつうの会社が社内でやっているファイルサーバのセキュリティは、一般的にクラウドの方が高いものです。その辺が、合理的に考えられなくて、感情的に、もしくは無知と惰性で判断されているケースが多いですね。)

クラウドは仕事の何を変えたのか?

  1. 仕事の手順 これを扱った本はあまたある
  2. 仕事の考え方 これを扱っているのは佐々木さんくらいでは?
  3. 私たちの生活 まだないんじゃないか?

クラウド仕事術というものが、ツールのことなのか、ライフスタイルのことなのか、まだ見え切っていない。

仕事の手順

講師の2人が共著で出した「iPhone情報整理術」は、どういう仕事の手順をしたのか。

兵器1:MindMister Web2.0なマインドマップツール
共同作業でリアルタイムに同期できる。iPhoneアプリにもなっている。

兵器2:Skype
通話(同期コミュニケーション)と、チャット(非同期コミュニケーション)の両方が出来るのが良い。本職を持っていながらの本の執筆では、非同期でコミュニケーション出来れば、自分の都合の良い時間に対応できる。
Skypeは本のビジョンを共有するために重要だったが、それが出来るのはお互いに信頼感、人間関係の土台があったから。

兵器3:Dropbox
共著者間や編集者との間でファイル共有するために使用した。メールやSkypeでのファイル送信だと1分くらいかかるし、一度送ったファイルは、その後送信者は編集できない。Dropboxだと10秒くらいで反映されるし、編集を継続作業できる。ただし、どのタイミングで誰が編集できるのかという(暗黙的な)合意が必要。

兵器4:Google Wave
ライフハックトークの連載で使用した。複数人で同時に文章を作っていくときに便利。

兵器5:Evernote
これは、アンチ・ソーシャルツール。とにかく自分にとって引っかかりのある情報を集めておく。何か書くときに、そこから新たに情報を探し始めるのではなく、Evernoteに貯めてある情報から探す。デジタルで情報が整然と並ぶという安心感があるので、どんどん貯めていける。時折、不要な情報を削除していけば、残った情報は必要な情報ということなので価値が増す。

iPhone情報整理術で言いたかったこと

100倍の情報をiPhoneに入れる
大量の情報を小川に変えてアクセスする近道を作る(例えば、Evernoteのタグ)
別にiPhoneでなくても、共同作業のために、すべての情報をみんなが見られる場所に入れておくということが重要。

脳はリソース

人間の脳は、水や電気のようなリソースで、データもスキルも入っている。しかもモバイルできる。(人間が動けば、必ず脳もついてくる)
しかし、人間の脳には、柔軟すぎる側面と、一貫すぎる側面がある。(例えば、料理の材料を買うために買い物に行ったら、料理とは関係のないアイスクリームを買いたくなる=柔軟すぎる。一緒にこども用品を買ってくれば良いのに料理の材料しか買ってこない=一貫すぎる。)

状況に流されてはダメだし、一方で状況を活用できないとダメ。これは非常に難しいことで、そのために人間は第2の脳としてコンピュータを使い始めた。しかし、コンピュータはモバイル出来ないほど大きいものもあるし、ノートPCやPDAのようにモバイル出来てもネットにつながっていなければ出来の良い紙以上になれない。

クラウド(と常時接続の環境)があれば、いつでもどこでも第2の脳にアクセスできることになる。これがクラウドの効用の一つ。
クラウドを使うと、MindMisterの共同作業環境のように、他の人の脳も使うことが出来る(第3の脳)。さらに他の人のコンピュータにもつながる(第4の脳)。このように使える脳が増えていくのが、もう一つのクラウドの効用。

仕事の考え方

仕事をクラウド部分とそうでない部分に分割する。

作業部分と創造性を分割
例えば本の執筆では、構想→資料集め→執筆・推敲と進むが、構想は比較的短時間だが創造性が必要。執筆・推敲は長時間かかり創造性は比較的不要だ。

時間とアテンション(注意力・やる気)の分割
作業をあらかじめ分割しておけば、使える時間とアテンションによって、作業する内容を決めることが出来る。その際、いつでもどこでもデータにアクセスして作業できるという環境が必要になる。

つまり、クラウドでの仕事術とは脱構築である。

クラウドが生活を変える

クラウドでのツールが揃い、段取りが変わってきた。では、この後どうなるのだろう?
ここまで述べてきた「クラウド」はCloudのことだが、Crowd(人混み)のことでも良いのではないか。

Crowd:ブログ、Facebook、Twitter
Crowdで出来上がっていくソーシャルグラフが重要。

テイストメイカーになって読者を助ける。ブログを書いたりTwitterとツイートしている人は、何らかの自分のテイストを提供している。そのテイストが好きな人が集まってブログの読者になったり、Twitterのフォロワーになっている。

自分をクラウド化していく

公開できる情報はすべてネットに預ける。
アウトプットなきインプットを廃する。
自分のテイストを漉し取っていく。そしてインプットする情報の範囲を絞り込み深くしていく。そうすることで自分が濃くなっていく。テイストが生まれていく。

例えば、英語のブログを読んで紹介すれば日本では価値が上がる。有名なブロガーの記事の焼き直しをしない、自分の言いたいことをずっと言い続けていくことで、ブログの価値を上げる。

「自分」であることを恐れない
仮に自分の書いたことが否定されても、自分の人格が否定されたのではなく、自分の今のテイストが読者の求めるテイストとズレていたというだけ。
自分のテイストにYesと言ってくれる人がいたら、そこにコミットすることで、ブランドが出来ていく。

ところで、自分のテイスト、興味は、自分では存外分からないもの。ユビキタスキャプチャーを続けているうちに見えてくることがある。

The Net is your Life

これからはNetがリアル。(だからリア充なんてなくなる!)
Netの中に情報をどんどん入れていく。

まとめ

クラウドハックセミナーだったので、おそらく講演の前半でのツールの話が中心だろうと思っていたら、堀さんの気持ちはむしろ後半の方に入っていたような気がしました。もちろん前半も熱意を持って話しておられたのですが、後半の熱のこもり方を私は特に感じたのです。(もしかしたら、私自身が前半の話にも興味はあるものの、後半の話の方が本当に聞きたいことだったから、そう感じただけかもしれませんが。)

堀さん、佐々木さん、ありがとうございました。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。