勝ち残りSEへの分岐点

三好康之さんの「勝ち残りSEへの分岐点」を読み直してみた。

この本はDBマガジンの連載をまとめたもので、2008年に刊行されている。

三好さん特有の関西弁を交えて、本音が詰まった内容で、読みやすい。SE本は数多いが、SEの成長という観点で総合的にまとまった良書だと思う。

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以下、レバレッジメモ。

勝ち残る強さ

人それぞれの強さがある。何にせよ、気持ちと努力。
迷いは強さの最大の阻害要因。

良い努力

計画した努力を維持する。
夢や目標がないから努力しないというより、とりあえずの努力をする。

大人の不安

表面的な自信→顧客やメンバーを不安にさせない
内面的な自信→精神衛生上必要
スキルや資格ではなく努力した時間に自信を持つ。

SEと勉強

最低限1日1時間、土日は休んで5時間。
日頃、どれぐらい顧客の代わりに勉強しているのか。

BSC

SEとしてのバランススコアカードを作る。

楽しく仕事をする

知識がないと勝手に自分独りでやきもきすることもある。
PMBOKやPM試験でプロジェクトマネジメントの知識を先行して得る。

できるSE

基礎の本質を熟知しているか。
例えば、大卒程度の学力と応用情報程度の知識

丸暗記のすすめ

丸暗記しておけば、

  • 会話で使える
  • ひらめきを生み出せる
  • ほかの知識を引き寄せる

頭の稼働率をアップする

新しいことを学ぶ→場所が限定されるので時間をかけない
それを記憶する→場所が限定されないので時間をかける
頭の中で思い出す(イメージトレーニング)

資格

その分野で戦う前に資格を取る。スタートラインに立つ。
仕事とどうリンクさせるか。

  • 資格取得後の勉強も意識した計画にする。
  • 最終的に実務にリンクさせる。

情報処理試験を軸にする。

SEに必要なスキル

普遍的な技術

  • ヒューマンスキルプロセス
  • マネジメントスキル
  • ビジネスマネジメントスキル

基礎技術

  • テクニカルスキル
  • 使い捨てるスキル→会社での経験でスキルアップ
  • 基礎技術とは、応用情報処理技術者レベルの知識。
  • そこで登場するキーワードについて、専門書で深く学ぶ。
  • シナリオプランニング
  • これからどういう技術が必要になるか

プロセスマネジメントスキル

  • PMBOKで方法論を学ぶ。
  • PM試験の午後I、午後IIの問題で基礎的な状況対応の方法論を学ぶ。
  • プロジェクトメンバーとして他人の経験から学ぶ。
  • 十分な準備を経て、プロジェクトマネージャとしてデビューする。
  • 経験を積んだ上で、資格を取得する。

ヒューマンスキル

習得する順序

  • ヒアリングスキル
  • 説得的コミュニケーションスキル(提案書)
  • 説得的コミュニケーションスキル(プレゼン)
  • 説得的コミュニケーションスキル(会話)

国語力

  • 総合力、読解力:早慶クラスの大学入試の国語の問題を解く力
  • 漢字熟語力:漢字検定2級以上

表現力

  • 口語表現力
  • アイコンタクト
  • 身だしなみ、姿勢、表情
  • ボディランゲージ
  • 時間(時間の制約、慌てず間延びせず、不足な事態の対応)

最終的には、口より結果

ビジネスマネジメントスキル

  • 業務の効率化を目的とするシステムから真に経営に寄与するシステムへ。
  • 経営の基礎知識→中小企業診断士
  • 経営とITの接合部分→ITコーディネーター
  • 業務知識と業界知識
  • 雑学
  • テレビ番組やマンガからも学ぶ。
  • リスク管理の視点
  • リスクを想定した事前準備。
  • 本当に難しいのは、ステークホルダーに理解してもらうこと。
  • 年収、副業、顧客に選ばれるSE
  • 誠実さ、スキル、自己啓発、説得交渉スキル

ITコンサルタント

まずは提案型SE

  • 経営者の考えを知りたいという強い意識
  • 経営に関する知識、競合他社の情報、現在の市場を理解

人材育成

OJTのあるべき姿

  • 期間の設定
  • 目標の設定
  • 目標-現状=課題の設定
  • 具体的な育成計画
  • 現状、中間地点、最終到達点のアセスメント方法
  • 以上を両者で共有

【まとめ】

本書の主旨は資格(特に情報処理技術者試験)をガイドにした基礎的な知識、能力の重要性。繰り返し、継続的に学ぶこと。

SEは技術専門職である。その技術とはテクニカルスキルだけではなく、様々なスキルで構成される。その様々な技術によって顧客のビジネスをITシステム面から支援するのが仕事だから、顧客の代わりに学んでいるのだという意識が必要。単に自己満足のためにスキルや資格を取得するのではない。

提案型SEとは使い古された言葉だが、本書で説明される真の提案型SEは少ないのではないか。それがきちんと出来るSEなら、将来的にも勝ち残れるだろう。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。