ディベロッパーとアーキテクトとアーティスト

今日の産経新聞に建築家の磯崎新さんのインタビューが掲載されていました。

被災地の復興に関して、磯崎さんは

被災地の建築家には今、野戦病院の医者のような役割が求められています。それも大事なことだけれど、もっとマクロなコンセプトも必要になる。

しかし、向かうべき世界のイメージがはっきりしないという記者の質問に対しては、

それは私にもわかりません。ただ、これから大事なのはアーキテクト(建築家)の思考よりはアーティスト(芸術家)の発想じゃないでしょうか。
近代のシステムは、いろいろな物事を平均化して共通の概念を取り出し、それを優先していく。建築も都市計画もそうですが、そのシステムに従う限り、特殊性を失って標準仕様に近づいていく。良いとか悪いとかではなくて、そういうものなんです。

情報システムの世界は常に建築の世界を模範としてきたと思います。情報システムの世界では、ようやく「ディベロッパー(施工者)の工夫」の域から「アーキテクトの思考」の域に移りつつあるのが現状です。
いままではディベロッパーの工夫で一品もののシステムを作り上げるという時代を乗り越え、アーキテクトの思考で情報システムを普遍的に価値を生み出せるものにしようとしています。

建築の世界は、アーキテクトの思考で常に価値を生み出せる建築物を世界中に作ることに成功し、他の分野を含めても最古ともいえる文化を形成しています。そして、次はアーティストの域に進もうという人が出てきているわけです。

情報システムがその高みにまで到達できるのはいつのことか分かりません。しかし、1人1人のITエンジニアが努力してこそ、歩みを進めることが出来るのは間違いないところです。

Modesty
Modesty / fabbio

磯崎さんは建築の世界にどうやってアートを取り込もうとしているのでしょうか。

既存の方程式に従った一般解ではないものを、どこまで、どれだけ、作れるか。批判を恐れて、最初から画一的に作っちゃいけない。被災地の市町村単位で全部違うものを目指してもいい。失敗するかもしれないけれど、新しいアイデアとして残るものも出てくる。そこに希望を持ちたい。
みんなに「やろうと思ったことをやれ」といいたい。受けたダメージを越える、新たなアイデアを組み立てたい。新しいビジョンを共有しないといけない。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。