エンジニアが1人で会社を作って1年で感じたこと

去年の7月にアルティザンエッジ合同会社を作って、もうすぐ1年が経ちます。
会社を作るずっと前からお世話になっているお客様があったので、無事最初の1年を乗り切ることができました。大変にありがたいことです。

出会いも、「ものすごくいっぱい」とまでは行きませんでしたが、ここ数年で会った人と同じくらいには、この1年で会ったと思います。
そこから仕事に繋がったり、繋がりそうになったりと、色々ありました。

会社と社長

振り返ると、自分の中で会社というのは何だろう・・・と考え続けた1年だったように思います。
自分はたしかに法人という意味で会社を作ったのだけど、自分の目指しているのは、いわゆる「会社」なのだろうか。

世の中には、どんどん大きな会社にして行こうと思っている社長Aと、自分1人がフリーとして仕事が出来れば良くて、必要に応じて気の合ったフリー同士で組んでやれば良いと思っている社長Bの2種類があるように思いました。
社長Bの方は「法人の代表者たる社長」には違いないけれど、いわゆる社長ではないのかなという気もします。

もう一つ、斬新なサービスなり商品なりを作り出そうとしている社長Xと、仕事自体は目新しくないかもしれないけれど、良い仕事をして行こうという、ある意味で職人肌のような社長Yという見え方もある。

これが、大きな会社を目指す社長Aが斬新なことをやろうとする社長Xで、自分1人でやれれば良いと思っている社長Bが職人肌社長Yだということには限らないんですね。そこが面白い。
たしかに、1人でやろうとする人には何か腕に覚えがあるから、職人的な要素を持ちがちではありますが、斬新なことはやらないというわけではないし。

人を増やすということ

で、自分はどうなんだろう。と、思うわけです。

よそから人を連れて来てみたり、求人を出してみたりもしました。でも、上手くは行かなかった。これは、自分の才覚でもあるだろうけど、そもそも本気でそれをやろうとしていたのか。

もちろん、お客様先に人を入れた際には、その人については懸命に対応したつもりですが、それを商売として広げて行こうとする気概があったか。というと、なかなか、そんなこともなかった。

フリーな立場を維持する

1年かけて分かったこと。まぁ、最初から分かっていたことでもあるんだけど、自分は会社をどんどん大きくして行こうと思っている社長ではない。フリー的ポジションで、時にチームを組んでやれれば、それで十分。

ただ、仕事の種類とか、仕事のやり方には、こだわって行きたい。もちろん、生きて行くための仕事というのもあるのだけれど、それについても出来るだけ、こだわりたい。
そういう意味では、職人肌的な社長なのかもしれない。でも、斬新なサービスを打ち出すこともチャレンジしたい。まだ、何もできてないけど。

そんなことを考えています。

会社を作ってみてどうだったのか

会社を作ると税金のこととか、社会保険や年金のこととか、事務仕事が結構あります。1人会社だから、それで普段の仕事が出来なくなるというほどまで作業量があるわけではないのですが、まぁ、それなりにあるんです。

それも社会勉強かなという風にも思うし、何より自由である(個人事業主と比べても、法人と臆することなく取引できるという自由さがある)という魅力は素晴らしい。

会社に所属していると、何か思い立ってもまず会社のことを考えたりするものです。あー、これやっちゃって会社から何か言われないかな?みたいな。自分で会社をやり始めると、そういうのは一切なくなります。自分が良いと思えば、会社が良いと思っているに等しいわけですから。

自由の裏返しとして、会社に属していればあったかもしれない安定というのは失います。その安定は、社長とか上司とかが頑張った結果、与えられるものです。もちろん、その自分もいずれ上司になったりするでしょうから、安定を維持したければ自分も頑張らないといけない。そういう世代を超えた互助が働くのが組織というものです。
その組織という力を手放したのが、フリーランスであり、1人社長なのですから、そこは自分の力でどうにかするしかない。ただ、自分の力でどうにかできるという自由さも、またあるのです。

だから、後悔なんて一切していないし、会社員に戻ろうかなという思いもありません。それほど、自由は魅力的である。

1人社長予備群のあなたへ

今どこかの会社に属しているエンジニアで、仕事は一人前に出来ると思っているけど、なんだかなー、これでいいのかなーと悶々として、この記事に辿り着いた人もいると思うのです。

フリーランスになる、会社を作るというのは、人生の一大決断だとは思います。でも、エンジニアほど会社を作りやすい職種もありません。投資といっても、自分の腕とパソコン1台くらいでしょう。それで、年商1千万円くらいは持っていける。あくまで年商だけど。年収じゃなくて。自分1人で年商1千万円なら、年収もかなりのものだと思います。あまり経費がかからないビジネスなので。でも、外注込みで年商1千万円なら、年収は思った程ではありません。外注費はかなりの負担で、自分の手元には大して残らないのです。だいたい、あんまり儲けちゃうと、その分自分でも驚くような税金を持って行かれますからね。(そこは、こんなに納税できた!社会の役に立った!と思うしかない。)

そういう諸々はあるにせよ、エンジニアほど会社を作るハードルが低い仕事はないのです。しかも、今はアベノミクスの効果もあって、東京五輪くらいまではイケイケドンドンできるかもしれない。(もちろん、責任は持てませんけど・・・)

もっと自由なエンジニアが増えたら良い!

それで、フリー(フリーランスもしくは1人社長)なエンジニアがもっと増えて、そういう人に仕事を発注するのが今以上に普通のことになったらいいなと思うのです。
数多のコミュニティとか、コワーキングスペースとか、環境は整っています。私はまだ東京の事情しか知らないけど、たまに地方に行ったときにもコワーキングスペース的な場所は見かけるし、地方でも環境が整いつつあるのかなと思います。

そして、いつの日か巡り合わせて私とお仕事をすることもあるかもしれませんね。
その時はよろしくお願いします!ということで、今日のブログに代えさせていただきます。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。