前もって評価基準を決めることの重要性

お客様先で行っている新規ビジネスプラン創出ワークショップの4回目を行いました。

4回目は3回目と同様に、出てきたビジネスアイディアの戦略マップをBSC(バランス・スコアカード)で作ることを主眼にしたのですが、もう1つのセッションを追加しました。
それは、評価基準を決めることです。

ビジネスプランをどう絞り込むか

ワークショップの参加メンバーからそれぞれビジネスアイディアを出してもらっているので、既に20個近いアイディアが出来ています。
そのすべてを実行に移すわけにはいかないので、何らかの方法で絞り込む必要があります。

戦略マップを作ることによって、思いつきレベルのアイディアが洗練され、プランになっていきます。その最中で、ロジカルな戦略マップが作れないことが分かり、脱落していくアイディアも出てきます。
それでも、出てきたすべてのアイディアについて戦略マップを作れば、半分以上は一応のマップができ、ロジカルに説明出来るようになるでしょう。

投入できる資源は有限ですから、そこからさらに絞り込んでいく必要があるのです。

評価基準による選定の原則

ITコーディネータの基本原則の1つに「評価基準による選定の原則」があります。
この原則自体は、IT資源の調達先を選定する時に用いるものですが、ビジネスプランの選定においても有用な原則です。

重要なのは、いざ絞り込む時点になって評価基準を作るのではなく、前もって作っておくことです。
そうしなければ、出てきたビジネスプランに応じた恣意的な評価基準になってしまう可能性もあります。

自分なりの評価基準を3分間考えてもらう

評価基準を決めるにあたっては、まずワークショップの参加メンバー全員に、自分なりの評価基準を考えてもらいました。

このとき、いきなり「さぁ、発言してください」といっても、牽制し合ったりして、なかなか発言が出てこないものです。
なので、まずは自分の頭の中で3分間考えてもらいます。この静かな3分間が流れることによって、頭の中が整理され、人によっては発言したくてたまらない状態になります。
その3分間のうちに、付箋紙に書いてもらっても良いのですが、まだ発言してはいけません。

考えた評価基準を発表する

3分間が経過して、さぁ発表してくださいとなると、一気にアイディアが出てきます。
6人のメンバーで、ざっと20個くらいの評価基準が出てきました。

1枚の付箋紙に、1つの評価基準を書いてもらい、どんどん大きな紙に貼っていきます。

みんなでグルーピング

各自で考えた評価基準なので、当然被っていたり、似ていることが出てきます。
このグルーピングは、発言者の意図を確認しながら、全員でやっていきます。
グルーピングの議論の最中に、新たな評価基準が出てくることもあります。

今回のセッションでは、20個の評価基準が7つのグループにまとまりました。

取捨選択、優先順位決めはリーダーが主導する

もう一つ、ITコーディネータの基本原則を挙げます。
「経営者責務の原則」です。
戦略作りの作業自体は多くのメンバーの参画を求めますが、最終決定は責任あるリーダー(経営者)が行わなければなりません。

グルーピングして7つにまとまった評価基準の取捨選択や、優先順位については、リーダーの方が主導して決めてもらいました。
その際に、メンバーから異論が出ることもあります。それは受けとめてもらうとしても、最終決定権はあくまでリーダーにあるのです。

評価基準を決めるメリット

ビジネスプランの選定という本来の意味での評価基準の使い方は、まだ行っていません。
しかし、評価基準を決めたことによるメリットは既に出てきています。

それは、一連のワークショップの最終ゴールや、リーダーの意図が、メンバーに確実に伝わったことです。
評価基準を決めた後の戦略マップ作りでは、その意図に沿った議論が展開されるようになりました。

今回のワークショップの最後に、作成した戦略マップの発表を行ってもらいました。発表の後に質疑応答も行い、そこで討論が展開されたのですが、評価基準が明確になっていることにより、価値観のブレがないことで有益な討論になりました。これは、非常に大きなメリットと言えるでしょう。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。