ITCのための実践AI研修(名古屋)を行いました

8月2日と3日の2日間、名古屋ソフトウェアセンターにてITコーディネータ協会主催研修「ITCのための実践AI」の講師を務めました。

この研修は5月に東京で行っていて、その地方開催第1弾です。1日目の体験編には13名、2日目の実践編には7名の受講者の方々に参加いただきました。ありがとうございます。

AIは夢物語ではない

研修2日目に受講者から聞こえてきた声があります。

「AIは何でもできると思っている人がいるけど、そんなことはない」

そのとおりだと思います。

ちょうど、ここ数日の間にFacebookが開発していたチャットボットが、人間には理解できない独自の言語を編み出して、チャットボット同士で会話しはじめた。そして、それをFacebookは停止させた。そんなニュースも入ってきましたが、AIには先端研究の領域と、実際にビジネスに導入されている領域があります。メディアは基本的に前者を報じますし、ビジネスでもマーケティング的に前者っぽいことを語ったりする人がいます。

どんな分野でも先端研究と応用・実践の領域があるものです。コンピュータも量子コンピュータという先端領域があります。でも、現時点では誰も次は量子コンピュータを導入しようとは思っていないはずです。それなのに、AIは実態が分からないばかりに、すぐに人間の仕事は奪われてしまう・・・という話になる。

私は、その時代の「ちょっとだけ先端のIT」が、その時代にとってのAIと呼ばれると思っています。なので、「AI研修」と銘打ってはいますが、実際には「ちょっとだけ先端のIT」研修と呼んだ方が良いのかもしれないとも思います。

バズワード感の強い「AI」という言葉の、現在のビジネス領域における真相を明らかにするのが、私がやっている研修の意義。そう、私は私の中で定義しています。

AIは夢物語ではない。この言葉には2つの意味があります。1つは、いまのAIはすぐにドラえもんを生み出すような夢の技術ではない、ということです。これは、上記で述べたとおりです。

もう1つは、いまのAIでも比較的容易に実現できる凄いことはあるということです。つまり、夢のように手の届かない技術でもない。いまのAIが得意としているのは画像や自然言語の認識です。自然言語の方はまだ物足りない感じですが、いままでのプログラミングでは簡単にはできなかったことが、簡単にできるようになったのは間違いありません。

AIは鍛えるものである

研修1日目に、WatsonやAzure MLを使って、クラウドで動作するAIの体験を行います。きちんと、訓練データを準備してAIに学習させるという体験を含みます。画像認識APIだとデフォルトで準備された学習モデルを使って、その画像に何が写っているかを認識させるだけというものもありますが、やはり、自分のデータを学習させてこそ、機械学習(第3次AIブームの主要技術)の醍醐味が味わえます。

それを踏まえて、2日目にはAIを実際のプロジェクトで導入するには、どのようなことを行うべきか、それぞれのフェーズの注意点は何かといったことを考えてもらいます。1日目に機械学習を体験し、さらにAIに学習させる(=AIを鍛える)ことの重要性を口を酸っぱくして説明しますが、2日目でいざ自分でプロジェクトの進め方を考えてみると、案外その重要性を抜かしてしまったりします。

いままでのITは基本的には導入して使うもので、導入する際や使う際に、カスタマイズなどは行ったとしても、学習させる、学習を継続してITを賢くしていくというような考え方はなかったのです。それが、AIが入ると必要になる。いままでの常識を少し転換させる必要があると思います。

2日間の研修でお伝えしたいのは、その点なのです。WatsonやAzure MLの体験は、実はそれを伝えるためのお膳立てです。

AI研修、今後も続けます

同じ内容の研修をリピートするというのは初めての経験でしたが、回を重ねることで、私自身も考えが深まったり、内容が多少は洗練されるような気がします。AIはどんどん進化していくので、その追随ももちろん含めながら、別の地方や東京の2回目、3回目と続けていければと考えています。(既にそのようなお話もいただいています。ありがたいことです。)

と、そんなことを考える、名古屋から帰る新幹線の車中。。。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。