高野山でひとり合宿

「一燈を提げて闇夜を行く。闇夜を憂れうること勿れ。只一燈を頼め」

これは江戸時代の儒学者、佐藤一斎の言葉だそうです。生きているといろいろなことがあります。人が集まると何かおきますし、忙しさにやられそうになることもありますし、まぁいろいろあるものです。そんなときに、何か「一燈」があれば、それを頼りに、日々励むこともできます。

その「一燈」とは何か。池口恵観さんは著書「空海 折れない心をつくる言葉」で「行」だと言っています。行=修行。池口さんは僧侶(高野山真言宗の大阿闍梨)でいらっしゃるので分かります。私のような一般人では・・・と思うところですが、同著において「自分だけの行場(修行の場)はどこにでもある」、人それぞれにある職場も行場になると言うのです。

私にとってはITコーディネータであり、ITエンジニア。それが仕事であり職場です。システム開発をするだけでなく、文章を書くことや、人前で話をすること、さらにコミュニティでの活動なども広く職場=行場と言って良いでしょう。その中でさらに「一燈」に値するような「自分なりの価値観」を考えてみました。

アルティザンエッジの価値観

5年前にアルティザンエッジ(現・井上研一事務所)を立ち上げる時、こんな言葉を掲げました。

cutting edge ー先端の技術を価値に
motivation engineering ー楽しく仕事、楽しさをエンジニアリング
move your heart ー心を動かすモノ作りとコト作り

また、井上研一事務所に商号を変えた時に、Coordinate Collaboration Up-Front for Innovationという言葉を考え出しました(かなり言葉遊び的な要素が強いのですが・・・)。

技術、価値、楽しく、協働、心を動かす(イノベーション)といった私の好きな言葉が入っています。

「一燈」となるビジョン

こうした言葉を振り返りながら、どういうビジョンを持って私は活動しているのだろう(活動したいのだろう)と考えてみました。

すべての人と企業がITの恩恵を受けられる社会

すべての人が自分の個性を発揮し、やる気を持って協働できる社会

前者はITコーディネータ、ITエンジニアという私のフィールドから出てきたものですが、私はITという技術の価値と未来を信じているし、その価値、恩恵を遍く広めることが(特にITコーディネータの)ミッションだと思っています。私がいま、AIやIoTをテーマに執筆したり、セミナーをやったりしているのは、まず技術を伝えること、そして技術を価値に変える方法を伝えること(私自身も模索中ですが)。しかも、それはできるだけ誰でもできる形で、というのが研究者ではない私にとって重要なことです。

後者はもっと広い意味を持っていると思います。私は根本的には仕事好きなのですが、仕事なら何でも良いとは思っていません。自分が楽しいと思える仕事が好きなのです。だから、そういう働き方ができて、楽しんで仕事をしている人たちが集まって成果を残せるような社会を作りたい。

改めて「価値観」

ビジョンを掲げた上で、もう一度、価値観を考え直してみました。ビジョンが実現できれば素晴らしいと思うけれど、その上で取捨選択を迫られるような場面は必ず現れます。その際に重要になってくるのが「価値観」だと思います。

  • 自助(やる気のある)
  • 目的を共有してから始める
  • 広く社会を見てWIN-WINをつくる
  • 人のつながりとチャンスのバトン

ビジョンでは「すべての人(と企業が)」と掲げましたが、実際に「すべて」はかなり難しいことです。そこで「やる気のある人ならすべて」というのが現実的だし、やる気がない人と話をするのも私は好きではないので(別に気合いとか根性とか言っているのではない。むしろ、気合いや根性は嫌い。)、それで良いと思っています。

協働する上では、目的やビジョンを共有するところから始めたいと思います。それがはっきりしていない段階は、まだ協働する状態にないのです。そのためには、まず自分自身の目的やビジョンがはっきりしているかが重要で、それがはっきりしていないと本当の意味で共有することは難しいのではないでしょうか。

目的やビジョンは近視眼的ではいけません。広く社会を見て組み立てる必要があります。その上で、WIN-WINの協働関係を作る必要がありますし、社会との間でもWIN-WINが必要となります。ただし、すべてのシーンでのWIN-WINは難しいところもあり、短期よりも長期の視点で見たWIN-WINを優先したいと思います。

一人でできる仕事はありません。少なくともお客様がいるから仕事が成り立つわけです。また、仕事や仕事につながる何かを紹介していただける人もいます。そのつながりを大切にしたいと思います。いただいた仕事できちんと成果をだすから、次につながるのだと思います。さらに、こうした仕事のチャンスはバトンだと思います。仲間の中でチャンスを渡し合うというバトンもありますし、先輩から後輩へのバトンもあるでしょう。とにかく、私のところでバトンを落とさないようにしたいと思います。

そんなことを考えたのは・・・

冒頭に写真を載せたとおり高野山に来ているのですね(もう、帰り道ですが)。

大阪で仕事を2つやって、その後の土日に大阪・難波から特急こうやに載って極楽橋へ。そしてケーブルカーで高野山へ。
最近、結構お仕事をいろいろいただいて、ずーっと何かやっている感じだったので、ちょっと頭を冷やしに来たというか。それでテレビもない宿坊の部屋で考えてみた次第です。

でも、それなりに考えることもできて、来た価値があったなぁと思いました。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。