JDLA G検定合格者の会に出席して「AIコーディネータ」という役割について考えてみる

先日、日本ディープラーニング協会(JDLA)のG検定合格者の会に参加しました。

昨年12月に行われた1回目のG検定で合格したので、その公式お祝いの会です。ちなみにG検定はジェネラリスト検定で「ディープラーニングの基礎知識を有し、適切な活用方針を決定して事業応用する能力を持つ人材」と定義されています。

JDLA理事長の松尾豊氏も登壇されていました。

G検定は伝道師

基本的には懇親会で、何人かの合格者の方とお話させていただいたのですが、そこで感じたのはG検定が目的とする「適切な活用方針を決定」する人材、「事業応用する能力を持つ」人材は必要であるということです。JDLAからも「AIの伝道師に」という声が聞こえてきました。

松尾氏の挨拶では「(従来型の)機械学習でできることはたくさんあるが、それでも守りで、本当のディープラーニングで攻めの方に転じてほしい」という激励と同時に、「G検定合格は周りに良いことを伝える、付加価値を生み出す責任を持った」ことだという伝道師的役割を期待するメッセージもありました。

「AIコーディネータ」という職能

私はITコーディネータという立場でもAIについて考えています。ITコーディネータ協会の主催研修などですでにのべ100人を超えるITコーディネータ、ITコンサルタントの皆さんにAIについて教えるということもしています。

JDLAではジェネラリスト向けのG検定の他に、エンジニア向けのE検定も準備されています。ただ、E検定も受けるかどうかはちょっと考える必要があると思っています。(私自身は…という意味で)

今後、AIというものがどの程度、どういう風に社会を変えていくのか。その答えはまだ誰にもわからないのかもしれませんが、いわゆるITの一分野というよりは大きく、ITの未来像がいま言われているAIなのではないでしょうか。

そうなると、ITコーディネータは当然にAIについて知らなければならないし、過渡期的にはAIに特化したITコーディネータ、いわゆるAIコーディネータのような職能が必要になるかもしれません。

「AIスペシャリスト」との違い

E検定的な意味でのいわゆるAIスペシャリストとの違いを考えると、このようなことかと思います。

  • スペシャリストはAIの開発を行う人材
  • コーディネータはAIの導入に関して、企画、AIとユーザー双方の教育、導入支援、評価を行う人材

つまり、AIのところをITに読み替えれば、今のITスペシャリストとITコーディネータの違いと言えるでしょう。

実際にAIのプロジェクトに携わっていると、AIを何に使うか、どんなデータを使うか、ちゃんと賢くなっているかといった、人間系、マネジメント系のタスクが多いと感じています。IoTを含めて、今までのITが手を出してこなかった分野に入っていくので、そうなるのかもしれません。あと、AIは新入社員のように育てていくものなので、その育成や評価といったタスクが必要になるからということもあるでしょう。

これから、AIそのもの、およびAIを活用したツールを、ベンダー各社がどんどん出してくることでしょう。

当然、それをきちんと使う、成果を出す人材が必要となります。また、IoTではIoT税制が始まったように、AIに関する補助金などの施策もこれから出てくるかもしれません。そこで問われるのは、AIの特性をきちんと理解した腕、経営にどう適用していくかという、G検定的人材であることは間違いありませんし、ITコーディネータがこれまで標榜してきたことの発展形ということもできるでしょう。

経営者目線でAIをきちんと伝えられるようになること

ただ、大企業からさえも「AIとは何か」を未だ問われ続けるのが現状であり、できればユーザー目線、経営者目線でのAIが定義されなければ、普及に至ることはないでしょう。AIが何の役に立つのか、経営改善、改革につながるのか。AIにそれだけの未来はあるのか。

まず、そうしたことに答えられなければ伝道師にはなれません。

G検定合格者としても、AIに関して実践だけではなく教育も担うITコーディネータとしても、そうした役割を果たせる人材になっていきたいと思います。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。