2026.09.24 · MBAノート

マレーシアの経営とDXを学ぶ(その3・まとめ)

前回の記事では、3社の企業訪問とマラッカへの移動までを書きました。今回は最終日の企業訪問と授業、研修全体を通じて感じたことをまとめたいと思います。

マラッカの病院で感じた経営への意識

最後の企業訪問は、マラッカにあるMahkota Medical Centreという病院でした。自分は医療系じゃないしな・・・と思っていたのですが、良い意味で見事に裏切ってくれた訪問先となりました。

Mahkota Medical Centreの玄関(日本の医療ロボットHINOTORIを導入していることをアピール)

まず興味深かったのが、病院にマーケティングやブランディングの担当者がいることです。メディカルツーリズムにも力を入れるなど、ビジネスの意識が非常に強いと感じました。それもそのはずで、医療機器の導入は補助金に頼らず、自社グループ(親会社がシンガポールにあるとのこと)の資金で行っているというのです。さらに、2棟建てのビルになっている病院の3棟目を建築中とのことだったのですが、これも自己資金ではないかと思います(未確認)。

こうした医療サービスを提供するための設備を整備や、1,000人以上の職員の雇用などを行い、自分たちの強みをしっかりマーケティングして伝え、患者に選んでもらう。マレーシアは日本のように国民皆保険ではなく、Mahkotaのような私立病院にくるのは民間保険に加入している人に限られます。一方、民間保険に加入していない人は安価な国立病院に行くという棲み分けとのこと。なので、単純に日本と比較することはできません。ただ、病院の競争力をいかに作っていくかというシビアなビジネス感覚は驚きだったのです。

日本の補助金行政

翻って考えてしまったのは日本の補助金制度です。医療系に限らず、一般企業も中小企業にはたくさんの公的支援制度があって、補助金・助成金もいろいろある。特に補助金は必ずもらえるというものでもないのですが、どうしてもそれを前提に投資を考える癖が付いているのではないかと思います。

これは、支援を受けている中小企業自体もそうだし、補助金などがあることを前提にサービスを提供しているベンダー企業側も含めて、ビジネス感覚を削いでしまっているのではないか・・・。そんなことを思った次第。

まとめ:多様性が経営の前提になっている

海外研修の7日間をまとめてみようと思いますが、全体を通じて印象に残ったのは、文化や宗教の違いが、日々の生活にも企業経営にも組み込まれていたことです。

宿泊したホテルでは、部屋の天井にメッカの方角を示す矢印がありました。街を歩けば、言語、食事、建物など、いろいろなところに異なる文化が見える。日本にも多様な背景を持つ人々が暮らしていますが、少なくとも私の日常と比べると、マレーシアではその違いを意識する機会がずっと多かったように思います。

マラッカのニョニャ料理は、マレー系と中華系の融合の味

一方で、多様な人々が暮らしていることと、その誰もが同じように機会を得られることは、分けて考える必要があります。マレーシアのブミプトラ(マレー系を優遇する)政策の存在は、今回ホスト校になっていただいたNew Era Universitiy Collegeが、華人コミュニティの寄付によってできた私立大学であることにつながっています。そうした現地の事情を知るうちに、「多様性があって良いですね」と簡単に言うこともできないという思いに至りました。そんなことを考えると、中国の一帯一路構想もまた違った見え方をするのかもしれない。

その国の歴史や制度、人々が置かれた状況を知ることで、同じ出来事の見え方が変わる。短い滞在で理解できたことは限られますが、自分の見方をいったん問い直す経験ができたことには、大きな意味があったと思います。

こうして振り返ると、初日の講義で聞いた言葉に、やはり戻ってきます。

Keep the principle. Adapt the practice.
(原則は守り、実践は現地に合わせる。)

日本での見方、考え方、上手く行った方法を、そのまま別の国に持っていけば良いわけではない。マレーシアの製造業では、5Sやカイゼンといった日本の文化が根付いているので、何も持っていってはいけないわけではない。ただ、適用の方法を現地に合わせるということが重要なのでしょう。

最後の授業は儒教文化と現代経営という観点でのものでしたが、ここでも昔ながらの儒教をそのまま適用するのではなく、現代化しているという話がありました。

観光旅行では得られない、大学での講義や経営者との対話に恵まれた1週間でした。得られた気づきを、今後の学びや日々の仕事の中で少しずつ確かめ、活かしていきたいと思います。

2026/09/24 20:24
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井上 研一
経済産業省推進資格ITコーディネータとして中小企業のDX・AI活用の現場で伴走支援を行う。「ITCプロセスガイドライン4.0」および「中小企業向けAI活用ガイド」執筆メンバー。著書・講演多数。ITエンジニアとして25年以上の実務経験。AI導入の実務に10年以上携わる。自ら開発したAIサービス「Gen2Go」が北九州発!新商品創出事業の認定を受ける。2026年4月より北九州市立大学大学院マネジメント研究科の学生としての顔も持つ。

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