ITコーディネータ協会で昨年9月に公開した「中小企業向けAI活用ガイド」が、今年3月のアップデートを経て、本日新たに「中小企業向けAX推進ガイドライン」となりました。
ITコーディネータ協会生成AI研究会のリーダーとして、今回も全体方針の策定や執筆に携わりましたが、今回は本当に大幅なアップデートとなりました。
(本サイトおよびブログに掲載している内容は、特に明記のない限り、井上研一個人の見解に基づくものです。所属・関与する組織、団体、企業、研究会等の公式見解を示すものではありません。)
AI活用からAX推進へ
まず今回の大きな変化は、タイトルにもあるとおり「AI活用」から「AX推進」に主旨が変わったことです。国もDXではなくAXというようになり、AIを使っていかに企業変革を進めるかが重要になってきています。
DXではデジタルツールの導入やITシステムの開発が必要となり、なかなか取り組むのが難しかったことがありますが、AXではまずはChatGPTやGeminiなどと日本語で会話をすることがスタート地点です。圧倒的に簡単に着手できるようになりました。その一方で、AIでできることは広範囲であり、デスクワークやシステム開発業務であればかなりAIが代替できるようにもなっています。これからは人を相手にした人事部だけでなく、AIエージェントを相手にした人事部が必要になるという話もあり、それだけ、経営に与える影響は大きいと言えます。
AI活用ガイドを出してからの1年間で、AIの進化は目を見張るものがあります。ここでAX推進ガイドラインとしてAIエージェントを大幅に取り上げましたが、次の1年後にはどうなっているか、正直想像がつきません。もともと、このガイド(ガイドライン)はライブドキュメントとしており、半年に1度は更新する予定としています。更新作業は終わらないのです。
アプローチが3つになった
AI活用ガイドでは、AI活用のアプローチとして「ツール活用型」と「システム開発型」の2つを取り上げました。ChatGPTなどチャット型AIを活用することをツール活用型、生成AIのAPI呼び出しを業務システムに組み込んだり、独自のAIモデルなどを開発することをシステム開発型として、組織のAI活用成熟度によってアプローチを使い分けるというのが、論旨でした。
AX推進ガイドラインでは、新たに「カスタマイズ・内製型」アプローチを加え、システム開発型を「システム開発・業務統合型」に名前を変えました。その上で、成熟度によって使い分けるのではなく、何に、どのようにAI活用したいかによって最適なアプローチを選択、もしくは組み合わせるというようにしています。もちろん、成熟度がアプローチの選択に影響を与えることはあると思いますし、まずは気軽に取り組めるツール活用型からスモールスタートで始めていくということは今も変わらないでしょう。
新たに加えたカスタマイズ・内製型は、CodexやClaude CodeなどのAIエージェントをスキルやプラグインなどでカスタマイズしたり、バイブコーディングでアプリ開発をするアプローチです。
「カスタマイズ」と「内製」
カスタマイズ・内製型は、アプローチとしては1つにまとめていますが、カスタマイズと内製で趣が異なります。内製は分かりやすいと思います。先に述べたようにバイブコーディングでAIにアプリを開発させると言う使い方なので。
一方、カスタマイズとツール活用型は何が違うのか?は、少し分かりにくいかもしれません。ツールによってカスタマイズ機能がどのように実装されているか異なるという話でもあるし、それは今後変わっていく可能性も高いのですが、ひとまずは以下のような整理です。
- ChatGPT(Codex)などを使い、提供されたスキルやプラグインをその機能の範囲で利用する →ツール活用型アプローチ
- 自社固有の手順・判断基準・参照資料を独自スキルやプラグインとしてChatGPT(Codex)などに組み込む →カスタマイズ・内製型アプローチのうち「カスタマイズ」
ChatGPTのカスタムGPT(MyGPT)機能は、2026年12月11日終了予定と発表されました。GeminiのGemはまだ公式発表されていないと思いますが、終了するという噂が出ているようです。このカスタムGPTやGemの活用は、いままでのAI活用ガイドであればツール活用型アプローチに入れていました。ただ、カスタムGPTがなくなってその代替はプラグインとされていますが、内部的にはスキルと参照するファイル、テンプレートなどの組み合わせです。この作成はAX推進ガイドラインでは、ツール活用型よりもカスタマイズ・内製型の「カスタマイズ」に含めると良いのではないかと思っています。
(追伸)
2026年9月29日にGemの廃止も発表されました。移行先はスキルとのことです。
https://www.itmedia.co.jp/news/article/2609/29/2000001839/
「システム開発」と「業務統合」
システム開発型アプローチは、「システム開発・業務統合型」アプローチとなりました。敢えて「業務統合」という言葉を加える必要はなかったかもしれませんが、システム開発が必要になる要因として、独自のAIモデルを開発してシステムに組み込むこともありますし、エージェントに連携させるために既存システムのMCPサーバーを作るとか、SaaSで提供されているMCP機能を活用するとか、少しシステマティックなことをして統合することもあると思います。
提供されているMCP機能を少し使うだけなら、ツール活用型やせいぜいカスタマイズの範疇かもしれませんが、業務システムの中にAIをより浸透させていくためには、もう少し踏み込んだアプローチが必要ではないかと思い、それを「システム開発・業務統合型」として改めて定義したというところです。
組織学習
PGL Ver.4.0から組織学習がアクティビティの1つに加わりました。それを受けて、AI活用ガイドでも組織学習について取り上げているのですが、AX推進ガイドラインではより大きく取り入れています。
AIと組織学習の関係は2つの側面があります。1つはAIを活用するための知(AI活用知)を深めるための組織学習であり、もう1つは組織の暗黙知を形式知(組織の実践知)に変えていくための組織学習です。後者は暗黙知を形式知に変える際にAIを利用できますし、形式知があればAIでもその知を活用できます。
AI活用ガイドでは主にAI活用知を中心に説明し、後者は実践ツール集で触れる程度でした。しかし、組織の実践知の集約やAI活用こそがAX推進では大きな意味があると考えていますので、AX推進ガイドラインでは、両方の組織学習をしっかり取り上げるようにしています。
AX推進ガイドラインはこちらから
AX推進ガイドラインについては、ITコーディネータ協会 生成AI研究会のWebサイトで情報提供しています。また、本文はITコーディネータ協会のITC+メンバーページ(どなたでも無料で登録できます)でご覧いただけます。ぜひ、ご覧ください。
