クラウドのセキュリティに関する折り合い

昨日というか、一昨日の26時頃に書いた、GmailとDropboxは、もう使ってるよね?という記事に、最近知り合いになったネットワークエンジニア氏がクラウドのセキュリティについて警鐘を鳴らすツッコミを入れてくれました。その後、5往復くらいメール討論していて、だいたい収束したかな?と、思うので、ちょっとまとめを書いてみようかと思います。氏の同意の上ではないので、氏の発言を引用したりといったことは自重します。あくまで、氏との討論による、私なりのまとめです。

さすがにネットワークエンジニアということで、セキュリティのプロなものだから、メールの文章一つ一つに重みがあって、セキュリティについては門外漢である私はたじたじ。でも、首尾一貫した私の思いもあって、それは、クラウドの情報漏洩の危険性というのは間違いなくあるし、その危険性は決して低くもないのだけど、条件を限定してみていけばクラウドの方が安全といえるケースもあるということです。

その点、私が一昨日書いた記事は、その重要な前提が抜けているので、問題ありだと思います。反省します。

で、そのケースというのは、ノートPCを持ち出していたり、複数の端末間でデータを共有するようなケース。カフェとか六本木ライブラリーのようなサードプレイスにPCを持って行って、作業している人は多いのです。
そこで、持ち出しているノートPCが盗難、紛失となるとひとたまりもないし、USBメモリや外付けHDDについても同様。そうしたときに例えばGmailを使っていれば、ローカルに置いてあるデータはない(オフライン機能を使っていてもわずか)わけだから、クラウドの方が安全といえます。

たしかに、ノートPCのHDDを暗号化して使っているとすれば、そちらの方が安全かもしれません。しかし、どの程度の人がそれをやっているのでしょう。(企業ユースで、その企業のセキュリティ対策がきっちりしているような場合は別ですよ。そういう手間とコストがかけられるケースは、クラウドよりセキュリティを高くすることは出来るだろうから。)

そうした比較をしていけば、クラウドが安全といえるケースはあります。
まぁ、クラウドが安全といっている人は私も含めて、必ず比較論を持ち出します。セキュリティに完全なんてないのだから、どんなケースでも暗黙に何かと比較して安全といっているのだと思いますが、クラウドの場合は暗黙じゃなくて明示的に比較するんですね。穿った見方をすれば、その分だけクラウドのセキュリティに不安を感じている(感じられていると思っている)証左なわけですが・・・。でも、逆に言うと、それだけセキュリティ不安のある使い方をしているケースが少なくない、クラウドの方が安全といえる実情もあるわけです。

いずれにせよ、技術の評価というのはセキュリティだけでなされるわけではありません。
他の方面からも見てみると、例えば昨日書いた、勝間和代 vs 広瀬香美は勝間和代の勝ち。決まり手はクラウドのように、クラウドいいじゃんっていうこともあります。(公開することが前提のブログだから、情報漏洩と一緒に議論することではないでしょうけど。)

あとは、社会的な折り合いの付け方次第じゃないかと思っています。
話が飛躍するかもしれませんが、みんな事故の危険性があるのを知っていながら自動車に乗るわけです。自動車技術も進歩して安全性は高まっているのだろうけど、それでも事故は後を絶たない。それでもみんなが普通の顔をして自動車に乗るのは、その利便性と安全性を天秤にかけて、どこかで折り合いをつけているからです。
クラウドのセキュリティ問題も、みんなが積極的に使っていけば、いくつかは問題が発生するかもしれないけど、その積み重ねがあって、いずれ折り合いが付くポイントを見つけられると思います。
その折り合いが付いたときに、クラウドを使っている領域は、いまより広がっていることでしょう。

そういう社会的な努力をしてでも、クラウドが普及するメリットはあると思うのですが、どうでしょうか。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。