ケータイはコンピュータと考えてよいか?

「あちら側がコンピュータであるから、そこにつながるケータイもコンピュータと言えるだろう」というのが、今の私の回答です。

その構造だけを考えると、ケータイは明らかにコンピュータです。
マイコンが入っているし、ただの電話機を超える、さまざまな機能を持っています。
それは、ソフトウェアとしてプログラムされています。
少なくとも、メーカーの時点では自由に機能をカスタマイズできるし、JavaやBREWに対応していれば、ユーザが後から機能をカスタマイズすることも出来ます。

しかし、私にとって、ケータイがコンピュータであると言える最大の理由は、個人による自由なコンピューティング環境が整ったからということです。
ケータイにおける、個人の自由なコンピューティング環境とは何か。
NTTドコモユーザなら、Javaがあるでしょう。しかし、私が使っているauでは、個人に開放されたケータイローカルのコンピューティング環境はありません。(BREWでは勝手アプリが作れない。)

ケータイはそれなりの表現力があるブラウザと、なにより定額制使い放題の料金体系を持っています。
ブラウザと使い放題によって、ケータイは、その先にあるインターネットとそこでの(Web 2.0的な)コンピューティング環境によって、コンピュータに変わったのです。
ここでコンピューティング環境とは、そこで自由な情報処理が出来るということです。そして、なにより個人でもそれが出来るということが大きいのです。

このモデルは、ホストコンピュータとそれにつながる端末というモデルに似ています。ケータイが端末です。
しかし、そのモデルと大きく違うのは、ホストコンピュータは存在しないということです。
ケータイと直接的につながっているコンピュータ(サーバ)は、個人が自由にすることの出来るコンピュータです。
ホストコンピュータにデータを入出力するために端末があるのではなく、ケータイの情報処理の可能性を広げるためにサーバがあるのです。
立場が逆転しています。

Web 2.0は、インターネットにつながっているすべてのデバイスを、個人の自由な情報処理に供するコンピュータに変える思想でもあるのです。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。