当たり前にではなく、敢えてF1層にターゲットにする時代

今日の日経が、米人口学者のサムエル・プレストンが80年代に提唱した「プレストン効果」について触れています。「少子高齢化社会では政界や産業界の関心が多数派の高齢者に向かいやすい。割を食うのは少数者の若者だ」というのが、その主旨。

基本的にはパイの大きいところに政治にせよビジネスにせよ集まるということで、これから高齢者のパイが大きくなっていく以上は、やむを得ない話であろうと思います。ただ、若者と高齢者の間には資産格差の問題もあり、日経の記事にあったように若者のいらだちは、さらに増していく可能性があります。

そういう私も若者の一員なわけですが、たとえば年金とか、「どうせ払っても、自分の時はもらえないのだろう」という思いもあります。年金というのは、現役世代からリタイア世代への資産移転なわけで、そもそも資産格差が大きいところに、さらに資産を移転させるのも、どうかなぁ、と思わないでもないところです。どちらかといえば、裕福な高齢者にもっと消費してもらって景気を良くするとか、固定資産税や相続税をきっちり取って、ベーシックインカムに回して欲しいくらいですが・・・。

マーケティング的に見ると、今まで若者(特にF1層といわれる20縲・4歳の女性)をターゲットにしたテレビ番組、雑誌や企業のマーケティングが大半でしたが、徐々に高齢者に向かっているような気がします。

テレビ番組では、比較的高齢者向けと思われるNHKの視聴率が良くなっていたり、民放の番組構成もゴールデンタイムにニュースをやるなど(いまひとつ効果は出ていないようですが)、その傾向が見えます。雑誌もそうですね。高齢者向けのスタイリッシュな雑誌の創刊が目立ちます。

現時点では、敢えて高齢者向けにマーケティングすることが差別化になりますが、今後は敢えて若者向けにマーケティングすることが差別化になる時代かもしれません。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。