プロボノと技術革新

最初は「プロボノより仕事しろよ」というタイトルにしようかと思ったのですが、あんまり「釣り」が過ぎるかなと思ったので、穏当なタイトルで。弱気ですね・・・。

プロボノというのは、Wikipediaによると

各分野の専門家が、職業上持っている知識・スキルや経験を活かして社会貢献するボランティア活動全般。また、それに参加する専門家自身

という意味で、要するに自分がやっている仕事と同じ内容の作業を、ボランティアとしてやるということですね。
普通のボランティアは普段とは畑違いの作業をやることになるので、単に時間を提供するだけということになります。しかし、プロボノなら普段と同じ仕事なので、生産性や品質が期待できるという違いがあります。

もともとは弁護士が無料で法律相談を受けたり、弁護活動をしたりするという意味だったことから、今でも法律関係やコンサルティングといった分野でのプロフェッショナルがプロボノをやることが多いようです。

IT分野も一つのプロフェッショナルの領域だし、コンサルティングの要素も入るのでプロボノとの相性は良いのではないかと思います。

例えば、どこかの寂れた商店街の活性化のためにWebサイトを作るとか、授産施設で作った製品の販路をネットで作って自立支援するとか。そういうアイディアが出てきます。

ただ、そういう普段ならお金をもらって仕事としてやっていることを、いくら社会貢献とはいえ無料でやるというのも、引っかかる部分があります。

プロボノをする場所があるということは、そこに需要があるからであり、その需要を商業ベースで取り込めていないからボランティアベースで取り込むしかないのではないか。需要が商業ベースに乗らないのはコストの点で折り合いがつかないからなのだから、ビジネス人としては技術革新によるコスト低減に努めて、プロボノ需要を商業ベースに乗せる努力をするべきではないか。

(法律関係やコンサルティング、システム構築といった労働集約・頭脳集約的な産業で、技術革新によるコスト低減がどの程度可能なのかという課題はありますが。)

中国の内陸部とか東南アジアの低所得市場向けに専用の商品・サービスを投入するという流れがありますが、それと同じような考えで社会貢献的市場専用の商品・サービスがあっても良いのではないかと思います。
プロボノ需要をひとつの市場と捉えて商業ベースに乗せる努力をすれば、ボランティアベースでやるよりも効率化が進み、より多くの人たちが恩恵を受けることが出来るのではないでしょうか。

つまり、仕事とプロボノを二択で考えるのではなく、その間をとるようなことが出来れば良いと思うわけです。

実は、その辺を捉えようとしているのがソーシャルビジネスなのかもしれません。だとすると、ソーシャルビジネスとプロボノの境界線はどこにあるのか、ソーシャルビジネスの損益分岐点、操業停止点はどこなのかを考えてみたいところです。操業停止点より下がプロボノ需要だとすれば、操業停止点を下げるための技術革新とは何かという議論に進むことができます。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。