新産業構造ビジョン・ものづくり白書説明会に参加しました

昨日、経済産業省関東経済産業局の主催で行われた、「新産業構造ビジョン」と「ものづくり白書」の説明会に参加しました。

新産業構造ビジョンは私もセミナーや研修で取り上げたり、新著「ワトソンで体感する人工知能」でも触れたので、昨年4月の中間整理あたりから何度も目を通していました。そのとりまとめが今年5月末に出てきて、その説明会というわけです。経済産業省では、10年に1度ほどのスパンでビジョンを作成しているとのことで、前回は2010年の「産業構造ビジョン」でした。そこから7年で「新産業構造ビジョン」なので、その分、時代の流れが速まっているということなのかもしれません。

Connected Industries

第4次産業革命という言葉があります。新産業構造ビジョンでは、これを「技術の変化」に関するキーワードとして捉えています。

第1次産業革命 動力を取得(蒸気機関)

第2次産業革命 動力が革新(電力・モーター)

第3次産業革命 自動化が進む(コンピュータ)

第4次産業革命 自律的な最適化が進む(ビッグデータ・AI)

一方で、社会構造の変化として、Society 5.0という言葉もあります。

狩猟社会

農耕社会

工業社会

情報社会

Society 5.0(超スマート社会)

というわけで、Society 5.0は下記のように定義されています。

必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かく対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会
(第5期科学技術基本計画)

エコライフ、格差社会、ダイバーシティなど、現代社会の様々な課題を一気に解決しているような社会を想定しているようですが、たしかにこれが実現できれば「超スマート」ということはできるでしょう。

ここで、「第4次産業革命」という技術革新があり、目指すべき社会構造として「Society 5.0」がある時、産業はどのような形であるべきか。その回答として「Connected Industries」というキーワードを政府は打ち出しています。ドイツの「Industry 4.0」に匹敵するものとして、日本は「Connected Industries」だというわけです。

Connected Industriesの定義はどのようなものでしょう。

・様々なつながりによる新たな付加価値の創出
・従来、独立・対立関係にあったものが融合し、変化
→新たなビジネスモデルが誕生

新産業構造ビジョンでは、産業・業種間の垣根が限りなく低くなると予測しており、その理由は各産業が「作ったモノ」、「できるコト」というプロダクトアウトから、顧客の「真のニーズ」に応えようとすると、必然的に垣根には意味がなくなる。さらにITの進化によって、それが実現可能になりつつあるということが、言えると思います。Industry(産業)をConnect(つなぐ)する。それが「つなぐ」で済むのか、くっつくのか、生まれ変わるのか、それは分かりませんが、少なくとも産業間の垣根は低くなるのは間違いないでしょう。

「ものづくり」におけるIT人材のギャップ

続く、ものづくり白書の説明において、私が気になったことが2つあります。

1つは、IoTでデータを取っている企業(製造業)は2015年と2016年では26ポイントも増加し、40.8%から68.6%になったことです。しかし、そのデータがきちんと活用されているかというと「可能であれば実施したい」という回答が目立つのは気になります。なぜ、活用できないデータを取っているのか、もっといえば、活用する予定のない状態で、何のデータを取り始めたのだろう?ということです。

一言に「データを取る」といっても、いわゆるデジタルツインのようなリアルのデータをすべて取って、IT上で復元することは至難の業です。そもそも「すべてのデータ」って何?例えば「振動」データと言っても、それは「どこの振動」なのか?「デジタルツイン化率」みたいに数値化したいくらいですが、そもそも、その分母って何?という話ではないでしょうか。

もう1つは、製造業でも人材不足は叫ばれていますが、その中で「特に確保が課題となっている人材」は技能人材が55.9%。まぁ、それは分かります。ではIT人材はというと3.5%です。それなのに、これからどうやって人材不足をカバーしていきたいかというと、IT活用やロボット導入に関する期待が非常に高い。

そのIT活用やロボット導入を行うためには、自社にIT人材が必要なのではないでしょうか?
IT導入は相変わらず外注や、買って入れるだけみたいなことで良いのでしょうか?

さらに言えば、Connected Industriesの鍵を握るのはやはりITだと思います。そうした中で、IT人材の確保がそれほど課題と思われていないのは残念です。(急場の問題として、まずは技能人材というのは分かるのですが・・・。)

もちろん、一方のIT人材の側も製造業に入っていって、ちゃんと対応できるのだろうか?という不安も否めないのですけどね。

ということで

いろいろと気になることはありますが、そういう「気づき」があったというだけ今回の説明会は有意義だったと思います。

ITコーディネータである私が、その気づきに多少でもどう応えられるか、考えていきたいと思います。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。