私は2000年にSI業界に入りました。最初に入った会社ではいろいろな経験をして、この業界でとりあえず一人前にやっていけるところまで育てていただいたと感謝しています。
ただ、その6年目あたり、中堅と言われ始めた頃にいろいろと考えることがありました。「SEなんて、やめよう!」と、思ったこともありました。
社内では炎上したプロジェクトに投入されたりだとか、そういうこともあったのですが、考える機会を作ったのはむしろ外からの刺激の方が強かったように思います。例えば、梅田望夫さんの書いた「ウェブ進化論」だったり、倉貫義人さんのブログにあった「ディフェンシブな開発〜SIビジネスの致命的欠陥」というエントリーだったりを読んで、あれ?SIってつまらない仕事なんじゃないか。SEって何なんだ?と、思うようになったのです。
それで、私はその会社を辞めました。会社が嫌でどうこうとかではなくて、単純に自分の都合としてですね。その頃は「もう、SEはやらない」と思っていたのですから。で、法律系の勉強をしたりしていました。
会社を辞めて3ヶ月くらい勉強したり遊んだりして、私はSEの仕事に戻ってきます。経済的な都合もありましたが、結局自分はこの仕事しか出来ないんじゃないかという思いもありました。ただ、その思いは諦めとかではなくて、悟りというか、決して後ろ向きな思い出はなかったことを憶えています。
SEの仕事に戻ってからは、3年くらい派遣技術者として仕事をしていました。それまでの正社員として先輩後輩がいて、リーダーをやって後輩の育成を考えたりして、という働き方から比べると、ずいぶん仕事の見え方が違うものだなと思いました。
それから、一瞬だけコンサルティング会社にいたり、小さなSIerに入ったりして今に至ります。
いま、この業界やSEという仕事について、前向きに見ています。もちろん、業界としての先行きにはあまり楽観していないのですが、SE(という言葉もどうかといつも思っているので・・・)、つまりITエンジニア(と言い直す)としての先行きは楽観しています。
ITエンジニアというのは、ずっと勉強をし続けないといけない仕事と言われます(どんな仕事でもそうだろうと思いますが)。それは私にとっては苦ではないし、勉強するべき領域も技術はもちろん、それ以外にも広がっていますから、飽きっぽい私にはうってつけです。そして、何より重要なのは勉強したことが、きちんと活かせることです。
まつもとゆきひろさんが「ソフトウェアエンジニアって、たった一人の力で社会を変革し得る数少ない仕事の一つなんです」と、あるインタビューで答えています。これはITエンジニアをワクワクさせる言葉であると同時に、重大な責任を実感させる言葉でもあると思います。自分を成長させていく責任と、その成長で社会を変えていけるというワクワク感ですね。
SI業界についても、先に挙げた倉貫義人さんはソニックガーデンという会社を立ち上げて、ディフェンシブな開発をオフェンシブな開発に変える挑戦を続けています。ダメなら変えていけば良いじゃないかということです。そういう意味では、今の私は業界の先行きにも楽観しているのかもしれません。
そんなわけで、今の私はこの仕事を続けていこうと考えています。出来るだけ、挑戦し続けながら。
挑戦の箱となるであろうArtisan Edgeは、今のところペーパーカンパニー(法人じゃないけど)のようなもので、形だけあるといった状態です。
ただ、少しずつ準備は進めています。テイクオフは、たぶん、もうすぐです。