Windows 11時代のPC選び(いま、中古で買うならどうする?)

一昨日、Windows 11について書きました。私はとても期待していてリリースが楽しみなのですが、いま使っているPCで使えるのでしょうか。

いま使っているPCでWindows 11が動作するかは、Microsoftが公開しているツールで確認することができます。(2021年6月28日以降、公開が停止されています。)

私の環境(Let’s note CF-QV9DFNQR)で試してみると、無事「このPCでWindows 11を実行できます」と表示されました。

Windows 11を動作させるには、下記のスペックを満たす必要があります。

  • CPU 1GHz以上で稼働する2コア以上のもの(64ビットCPU)
  • メインメモリ 4GB以上
  • ストレージ 64GB以上

ここまでは、なんてことはありませんね。Windows 10だって、このスペックだとギリギリだと思います。
ただ、CPUについては対応するプロセッサ一覧という資料がありまして、これを見ると結構厳しめです。

こちらはIntelプロセッサについての資料です。AMDプロセッサQualcommプロセッサの資料も提供されています。

Intelについて見ると、第8世代コア以上というのがポイントです。私がいま使っているLet’s noteは第10世代コアのi7-10710Uなので問題ありませんが、1年半くらい前に使っていたLet’s note XZや、Surface Pro LTE Advancedはi5-7200Uとかi5-7300Uだったのでサポート外ということになります。
ちなみに、Intelプロセッサの世代は、型番のi7とかi5の次の数字を見ればわかります。i7-10710Uは第10世代、i5-7200Uだと第7世代というわけですね。

  • セキュアブートを有効化させたUEFI
  • TPM 2.0の搭載

Windows 11ではOS自体のセキュリティ向上が図られており、セキュアブートとTPM 2.0が必須になりました。TPMはセキュリティに関する処理を行うチップで、概ねマザーボードに直付けされています。TPMチップと各自のソフトウェアの両方での対応が必要になりますが、Windows 10でもドライブを暗号化するBitLockerなどで使用されています(但し、TPMがなくてもBitLockerは使用できるため、BitLockerが使えているからTPMが搭載されているとは言えない)。他にもOSやアプリケーションの改ざん防止などに活用することもできるわけですが、Windows 11ではそうした機能でTPMを用いることが必須になるというわけですね。

所有しているPCにTPMが搭載されているかを確認するには、Windowsの「ファイル名を指定して実行」を開き、tpm.mscと入力して実行します。そうすると、ローカルコンピューター上のTPM管理という画面が開き、そこにTPMの仕様バージョンが表示されます。その値が2.0であれば問題ありません。

私が使用しているLet’s noteではTPM 2.0が搭載されていることが確認できました。Windows 11を実行できることは確認できているので、当然ですが・・・。

いまから中古PCを買うなら・・・

今後、新たに発売されるPCはWindows 11に対応しているものが多くなるでしょう。よほど安価なものでなければ、11対応が謳われることになると思います。
予算的に中古PCで済ませたい・・・という場合はどうでしょうか。全国に店舗を構える「じゃんぱら」のサイトを眺めてみることにしましょう。また、法人のリース上がりなどで中古流通の多いLet’s noteに限って見ていきます。

メーカーをPanasonicに絞り価格の安い順で並べてみると、最も安価なLet’s noteは、1万2千円程度で購入できるS10シリーズでした。CPUは第2世代のi5-2520M。メモリは4GB、ストレージは128GBのSSD(カスタマイズされているようです)。メモリは8GBまで増設可能だし、SSDも換装できますが、CPUが第2世代 i5ではWindows 11は動作しません(少なくとも、公式ではサポートされない)。

では、予算を3万円くらいにしてみるとどうでしょう。どこかの会社のリース上がりが大量にあったのか、LX5が大量在庫されています(執筆時点)。値段は3万3千円くらい。CPUは第6世代のi5-6300Uになりました。メモリとストレージはS10と大して変わりません。まだ、Windows 11を動作させるには、CPUのスペックが足りません。

5万円まで予算を増やすとどうか。人気のSZシリーズからSZ6が4万5千円くらいで出ています。メモリは8GBとなかなかですが、CPUが第7世代のi5-7300Uと、まだまだ・・・。私が1年半くらい前まで使っていたSurface Pro LTE Advancedと同じCPUですね。普段の仕事には充分なスペックなのですが、Windows 11の壁はなかなか高い。

結局のところ、第8世代i5を積んだLet’s noteを探していくと、最も安価なもので8万3千円くらいのSV8ということのようです。ただ、この中古品は外装の状態が悪いようで、状態の良いものにすると10万円を超えます。ちなみにSV8のスペックは、CPUがi5-8365U、メモリ8GB、ストレージは256GBのSSDと、普段使いなら数年は困らないだろうな・・・というもの。

こう考えていくと、Windows 11が使えるPCというのはなかなか高嶺の花・・・ということが分かります。
ただ、スペックの良いPCを使うと、それだけ生産性も上がるわけですし、「ちょっと頑張って購入して、しっかりモトを取ろう!」というのがWindows 11時代のPC選びなのかもしれません。

その後の話(2021/6/29追記)

さすがに求めるスペックが高すぎるということになったのか、CPUはIntelでは第7世代 Core以降、TPM 2.0も必須とはしないという方向のようです。
それなら、中古で5万円程度で買えるPCからターゲットになりそうですね。

その後の話(2021/7/5追記)

Windows 11が求めるCPUは単にスペックの善し悪しではなさそう・・・というのは、第8世代以降のCPUであればPentiumやCeleronでも良いのに、第7世代以前はCore i5やi7でもダメ(と、上記のCPU対応一覧に書いてある)ということから分かるのですが、この線引きはどうやらSpectreとMeltdownという2つのCPUの脆弱性によるものではないか?という記事が出ています。

このCPUの脆弱性は、そもそもCPUの設計の段階で脆弱性がない状態にするか、UEFIでマイクロコードをCPUに読み込ませるか、OSなどのソフトウェアで防御するといった方法を採る必要があるのですが、Windows 11ではOSで防御するという方法を採りたくない(処理性能や開発の足かせになるため)というのがMicrosoftの真意ではないかということです。

この2つの脆弱性は2018年に公開されたもので、その後に発表されたCPUであれば脆弱性が存在しないため安全。その線引きが第7世代CPUか第8世代CPUか・・・ということのようです。このCPUの脆弱性はIntelだけでなくAMDのプロセッサにも存在するため、AMDでも同様の線引きが存在します。
ただ、CPUは第7世代以前でも、PCメーカーがUEFIのレベルで対応していればOSは気にしなくても良いため、PCによっては第7世代以前のCPUを搭載したものでもWindows 11でサポート対象になるかも・・・。

Windows 11では、CPU以外にもTPM 2.0もサポート条件として挙げられており、セキュリティを重視したOS(というより、ハードウェア側で対応して欲しいセキュリティ要素はOSから切り離すことで、OS開発の自由度を確保する。但し、動作するハードウェアが制限される)というWindows 11の方向性が見えてきます。

現行のWindows 10も2025年まではサポートされるため、それまでにはセキュリティが脆弱なハードウェアは退いて欲しい・・・というのが実際のところでしょうか。(ハードからソフトまで垂直統合しているAppleとは戦略が違ますが、Microsoftも以前からハードをある程度の枠の中に入れたがっています。)

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。