2週間ほど前になりますが、博多駅の近くにある福岡合同庁舎で行われた九州経済産業局の中堅・中小企業向けデジタルガバナンス・コード実践の手引き説明会に行ってきました。
デジタルガバナンス・コードは、企業のDX推進に向けて経営者に求められる対応を取りまとめて経済産業省が公表しているものですが、大企業の取り組みが中心となっていたため、中堅・中小企業向けに実践の手引きが作成されています。手引きは経済産業省のサイトからダウンロードできます。
各地域の経済産業局では、その地域別説明会を開催していて、その九州版に参加してきたわけです。経済産業省の方からの説明の他、地場の取り組み事例として、北九州市のリョーワ様と、ふくおかフィナンシャルグループ様からも講演及びパネルディスカッションがありました。
必要なのは経営者の決断
総じて言えることは、DXは単なるIT化ではないということです。これは私もいくつかDXをテーマに登壇させていただいているので、そこでも申し上げていることです。
ビジネスの形を時代に合わせて作り替える必要があるということで、例えば、今の時代、お客様はスマホなどのITでやってくるのが普通であり、ITを使ってサービスを享受するのが当たり前になっています。そうした時代に、訪問や電話でないと何もできない、依頼事項をメールで送ることもできないといった調子では相手にされないでしょう。自社がDXしなければ、先にDXした他社が顧客を奪うだけで、業界としてDXしなければ、異業種からやってきた企業が業界を壊していく。
DXは、B2C企業だけの話ではありません。手引きで紹介されている事例でも、マツモトプレシジョン様やヒサノ様はB2B企業です。説明会の参加企業からB2Bの製造業での事例を問う質問が出ていましたが、顧客企業からの納期についての質問に対して、経験と勘で答えるのか、データに基づいて答えるのかで評価は全く異なってくるだろうという回答がありました。データに基づいた回答には、今どういう状態なのかという可視化についてと、今後どうなるであろうという予測を交えた話の両方があると思いますが、いずれにせよデータがデジタル化されていなければ何も始まらないですね。
また、中堅・中小企業におけるDX事例に共通しているのは、経営者がしっかり決断していることです。その中でも代替わりのタイミングで後継者が決断しているケースが多いように思います。もちろん、経営者だけがDXを急いでもダメで、現場がついてこないといけません。仕事のやり方が変わったり、会社が今までと違う方向に進むといったことについて、社員のみなさんがしっかり納得しなければならないだろうし、考えを改めてもらうようなシーンもあるでしょう。ただ、そもそものところで経営者が中途半端にDXを謳っている程度であれば、現場がついていくこともないし、経営者自身も軸がぶれて、なんちゃってデジタル化でお茶を濁すことは容易に想像がつきます。
私がこれまで経験してきたITプロジェクトにおいても新システムの導入に抵抗する現場というシチュエーションは何度も見ていたりします。だから、なぜ新システムが必要かという大義を理解してもらったり、今後の改善など長い目で見てもらうといった対応をしました。
考えてみれば、DXもそれと同じような大変さがあるわけです。ただ、今までのシステム化と違い、変えるべき範囲が広くて、ITの領域に留まらないというのがDXなのだと思います。以前から、部分最適ではなく全体最適を目指すべしみたいな話があるわけですが、「全体」が示す領域がとことん大きくなっていて、それだけITが社会の根付いたというか、必要不可欠な存在になったということの裏返しかもしれません。