今年から2月1日は「ITコーディネータの日」になりました。日本記念日協会からの認定証の授与式を昨年のITC Conferenceで見ることもできたのですが、それを記念してITC Synergy Forumがオンラインで開催されました。
150人程度の参加だったでしょうか。約7,000人のITコーディネータのうち2割程度の参加ですから、凄く多いということではないものの、初回開催としては上々ではないかと思います。来年以降の開催は分かりませんが、このように日本全国のITコーディネータが、それぞれのテーマでディスカッションする機会はなかなかないため、今後根付いていくことに期待しています。
私は「生成AIのITCプロセスへの適用」というテーマで、パネラーを務めました。ITコーディネータ協会で立ち上がる生成AI研究会のWGリーダーという役目をいただいており、その関係でこのテーマです。研究会のコアメンバーになっていただいているITC京都の積さん、ファシリテーターのITコーディネータ協会の野田さんの3人を中心に進めました。
このテーマに参加いただいた60名以上のITコーディネータの皆さんからの質問やご意見、さらに事前に立候補いただいた方からのLTもあって、有意義な議論ができたと思います。今後の研究会で検討するべきテーマもいただくことができました。
議論したテーマについて、あらためて私なりの考え方を書いておきたいと思います。(当日も回答しましたが、時間を取って考えてみると、また違った回答になっているかもしれません。)
生成AIは中小企業には高いのか?
さまざまなITソリューションが登場しても、中小企業が導入するには高い・・・というのは、いままで何度も繰り替えてきたことです。それと比べると、生成AIは安価に使えるし、敷居も低いと思います。
ChatGPTなどのチャット型生成AIは無料から使用できますし、普段から研修の題材として使用しているPerplexityやNotebookLMも無料でかなり使えます。Gammaは有料プランの方が良いですが、Microsoft 365のサブスクリプションがあればOfficeのCopilot機能も解放されるようになっています。(その分、サブスクリプションの値段が上がるようですが。)
ただ、本格的に企業で活用しようとするとRAGの仕組みは必須ですし、ChatGPTのチームプランを契約しようとすると1ユーザー25ドルなので、50人社員がいれば毎月20万円くらいの負担になりますから、高いと言えば高い。(ChatGPTの有料版の課金が必須とは思いませんが。)
弊社Gen2Goは月額9,800円から使えますしね・・・という営業トーク的な話もありますが、いままでに登場した様々なITソリューションと比べれば生成AIが比較的安いのは間違いないでしょう。
ユースケースの整理
ChatGPTをはじめとして生成AIというとチャット型のサービスが思い浮かびますが、実際にはそれだけが生成AIの使い方ではありません。既にいろいろ調査しているITコーディネータさんはチャット以外のツールを活用されているようですし、それは素晴らしいことです。
ただ、これから生成AIに取り組む企業およびITコーディネータのためには、ユースケースを整理して適したツールを紹介するといったことは必要なのだろうと思います。研修やセミナーで生成AIの使い方をお伝えするにも、何らかのツールを前提とせざるを得ません。
しかし、生成AIツールの流行り廃りは激しく、生成AI研究会がこれから作ろうとしているガイドブックで、どのようにツールの話を入れていくかは検討が必要だと思います。(ガイドの更新タイミングについてのご質問もありましたが、今後の重要な議論になるでしょう。)
HITLとAI事業者ガイドライン
ITコーディネータが自らの仕事に生成AIを使用することは素晴らしいことだと思いますが、それを顧客に伝えるべきだろうか?という議論もありました。総務省・経済産業省のAI事業者ガイドラインにおいては、「AIをどのように使っている」かは情報公開すべきとしています。
この点は私はケースバイケースだと思っています。AIが生成した文章や資料をそのまま顧客に提供する場合は、AIによって生成したことを伝えるべきだと私も思います。しかし、特にITコーディネータのようなコンサルタントが顧客にそのようなことをするでしょうか?必ず自分自身で内容をチェックし、AIが参照したソースも確認するでしょう。そうしないと、顧客から質問を受けたときに回答できないからです。生成したのはAIでも、それを発表するのは人間の責任です。
HITL(Human In The Loop)という考え方がありますが、AI活用の中では人間が登場するプロセスを含めるべきです。そうしたプロセスを経た上であれば、私は「AIを使った」ことを絶対に公開しないといけないとは思いません。それは、いままでの資料作成でもGoogleなどの検索エンジンは絶対使っていると思いますが、そのために「検索エンジンを使いました」と顧客に言わないといけないか?というと、そんなことはないでしょう。それと同じことではないかと思います。
ただ、AI事業者ガイドライン自体は私は重視したいと思います。既にAI事業者ガイドラインをどう使うべきか?という記事も書いています。
生成AI便利!という話をしても、企業の方からは必ず、安全なのか?情報は漏洩しないのか?といった質問が出てきます。ごもっともな質問だと思うのですが、その対応策がAI事業者ガイドラインに基づくガバナンスシステムを企業の中で作ることではないかと思うのです。従業員の方が安心して生成AIを活用できる仕組みが必要であり、それはガバナンスシステムの運用が前提となるのではないでしょうか。
成果物として生成AIアプリを作るか?
研究会の成果物として生成AIを活用したアプリを作るのか?というご意見もありました。
生成AIは使って調査したり、文章を作ったりといったことはすると思うのですが、例えば生成AIを活用したチャットボットが研究会の成果に基づいて質問に回答してくれるとか、何らかの標準ツールのようなものを作るとか、それは検討するべきことだなと思いました。
ということで、とても有意義なディスカッションだったと思います。参加いただいた皆さん、ありがとうございました。