中小企業の経営者がITの相談をまずITベンダーにするのは是か非か?

古い資料で恐縮ですが、2012年にIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が発表した資料に「中小企業等のIT活用に関する実態調査」というものがあります。

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ITのことを、最初にITベンダーに相談する?

その中に、中小企業の経営者がITのことで相談があるとき、誰に相談するか?という調査があります。その結果は、第1位が地元のITメーカー・販売会社、第2位が地元以外のITメーカー・販売会社ということで、要はITベンダーだったのです。しかも、両方合わせると70%以上になります。

これ、どう思いますか?なぜITはいきなりITベンダーなんだ!と、思いませんか。

税理士や社会保険労務士はなぜ必要か?

会社経営をしていて、税金のことで相談したくなったら、誰に相談するでしょうか。基本的には税理士でしょう。いきなり税務署に駆け込んで相談するよりは、税理士の方が親身になってくれそうな気がします。税務署は税金を取る方だし、税理士にはお金を払って相談するのです。そりゃ、税理士の方が良いだろうと思います。

社会保険や年金のことで相談したくなったら、社会保険労務士に相談するでしょう。これも、年金事務所ではない。

つまり、当事者同士で話をするか、第三者を入れるかという話です。
なのに、なぜITのことは、ITベンダーに相談するのだろう?

これを言うと、大体の人はうなずいてくれるのです。特に、中小企業の経営者の方はそうです。

もちろん、ITベンダーだって善し悪しはあります。でも、ただ相談したいだけなのに、売らんかなの営業モード全開で来られたらどうですか?
もちろん、その営業さんの気持ちも分かりますけどね。だって、無料で相談だけされた日には敵わないので。

ただ、それは相談する相手が違うだけなのではないか・・・と、思うのです。

他に相談できる人はいないのか?

この調査結果は、3番目に中小企業診断士、4番目にITコーディネータがありますが、実はもっと他の選択肢も挙がっています。

「その他の相談者」を除くと、公認会計士や税理士が、ITベンダー以外の相談相手のトップということになっています。中小企業だと、特に税理士だと思いますが、中小企業を立ち上げて最初にお世話になるであろう士業者が税理士なので(起業手続きでの司法書士や行政書士を除く)、会社経営での相談事はまず税理士からということになるのではないかと思います。ただ、税理士がITに関する相談の適任者か?というと、どうなんでしょうね。TKCとかを勧められそうですけど・・・。

あと、「特に相談者はいない」というのが11.8%もいるのは、問題ですね。この選択肢には、「必要としない」も含まれているのですが、本当でしょうか?

ということで、わずか1.4%の経営者が使っているITコーディネータを是非!と言いたいところですが、まぁ、それでは私がITコーディネータだから、結局、売らんかなの話をしているようでダメですね。

だから、ITコーディネータでなくても良いのですが、「ITに関する相談をまずITベンダーに相談する」ことを一度考え直してみるというのは、有意義なことではないかと思います。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。