エコ時代の新しいIT

昨日、麻生首相は、温暖化ガスの2020年までの削減目標を2005年比15%にすることを発表しました。記者会見の生中継を見たのですが、背後のディスプレイに地球の画像や、削減目標の日米欧の対比資料を写しながらの首相のプレゼンテーションは、なかなか斬新。これまで(麻生氏に限らず)首相の説明責任が果たされていないと言われることが多かった中で、昨日のプレゼンテーションは、訴えかけられるものがありました。

2005年比15%削減の目標は、1990年比では8%削減に相当します。2050年までの長期目標として1990年比50%削減が掲げられていることを考えると、ちょっと物足りないかなというのが率直な感想ですが、首相が「責任」という言葉を多用したことに示されるように、あまりに大幅な削減目標は経済に与えるダメージが大きすぎ、落とせるところに落とした結果が今回発表された2005年比15%削減、ということのようです。

IT業界におけるエコの取組みとして、最も話題になっているのは次世代送電線でしょう。米オバマ大統領のグリーンニューディールの要であり、Googleも研究を始めると表明しています。日本は、この分野では比較的遅れているようなので、キャッチアップが望まれます。

今日の日経に、IT業界の直近の取組み事例が出ています。

中堅・中小の使用エネルギー量 大塚商会、無料で集計

大塚商会は、中堅・中小企業向けの改正省エネ法対策サービスに参入する。来年4月の法施行で使用エネルギーなどの報告義務が生じる企業が増えるとみて、事業拠点ごとの使用エネルギー量を集計できるサービスを約一年間、無料提供する。省エネ対策のコンサルティングやシステム開発の受注につなげる。

このサービスでは、各拠点の担当者が電気やガスなどの請求書情報を入力して、ネット経由でサーバに送信する必要がありますが、次世代送電線などの技術が普及すれば、自動的に取り込め、装置毎や日毎といった細かい単位での把握も可能になってくるでしょう。

分野は少し違いますが、次のような取組みもあります。

農産物の生産履歴 全国の外食・小売りに提供

三井物産とJFEエンジニアリングが共同出資する新会社「アグリコンパス」が始めるもので、農家が使用した農薬の種類や散布量、日付などの生産履歴を入力し、卸売業者や外食企業がネット経由で確認することで、自社の提供する料理の食材に必要以上の農薬が使われていないかといったチェックを行うことが可能となるとのこと。

時代が変われば、ITが取り組むサービスは変わります。
ITは情報を扱うことしかできません。しかし、情報は常に必要なもので、時代とともに必要な情報は変わり、産業や社会が高度化するほど必要な情報は多くなっていきます。
次の時代は、明らかに経済成長一辺倒の時代ではありません。ITがこれまで提供してきた業務の効率化やコスト削減はこれからも変わらず必要とされるでしょう。しかし、少しコストがかかっても、ITがあるからこそ出来るエコというのも、次の時代は重要になります。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。