IT業界はもっと教育に貢献したほうが良い

今日の日経に、学校での日本の生徒1人あたりのパソコン台数は欧米の半分以下という記事がありました。青森県内のある公立中学校では、20台のパソコンがあるものの使うのは半月に1回程度。原因は、基本的なこと以外を教えられる教員がいないからだそうです。

だったら、自分が教えに行こうか・・・と思ったりもするのですが(そういうルートがあるのか知りませんが)、でも、何を教えればいいのだろう。

まず、自宅にパソコンがあるかどうか、それを本人が使っているかどうかで、生徒ごとの実力差は雲泥のものがあるでしょう。タッチタイピングどころか、どうやって電源を入れれば良いか迷う子がいる一方で、家に帰れば2ちゃんねるとかブログをやっている子もいるとすれば、実力別クラスに割り振らない限り、効果的な教育は出来ないのではないか、と思います。

逆に、何を教えるべきでしょう。最低限、読み書きそろばん程度のPCというか、タッチタイピングをやって、ノートパッドで何か文章が書けて、ちょっと表計算にも触れさせてみる。あとは、ネットとメール。Googleで検索させてみるとか、メールをやりとりするとか、基本的なネットの所作は必要。ネットリテラシーに関する教育もやるべきでしょう。

ここまで出来れば、ちょっとした仕事をこなすPCの能力はあると言えます。ネットブックが売れていますが、それで出来ることがこの程度の作業だと思うので、ほとんどの人にとってのPCの使い道はこの程度なのでしょう。ここまでたどり着けば、デジタルデバイドの問題はクリアしたことになると思います。
(「基本的なこと以外を教えられる教員がいない」という、「基本的なこと」というのが、上記のような範囲のことなのか、もっと小さい範囲なのか、ちょっと分かりません。)

あとは、個人の興味によって、プログラムを書かせてみるとか、PCで絵や動画、音楽をやってみるとか、いろいろあると思います。この領域になると、教えられる教員はかなり限られてくるでしょう。でも、子供のうち、学生のうちに少し触れてみることで、興味がどんどん沸いてきて、いずれ日本の未来を明るくすることもあると思うので、重要です。

普通の授業にPCを持ち込むのも良いでしょう。社会や理科といった科目なら、ネットで調べてレポートをまとめる、プレゼンテーションを作って発表するとか、そういうことの初歩をやれば、いま、真に求められる職業能力につながります。(Nintendo DSを教育に使う取組みがありますが、やっぱりPCでやるべきだと私は考えます。)

高校生とか大学生、専門学校生が相手だったら、模擬的なシステムをチームで作らせるのが良い。IT業界というか、特にSI業界が新3K職場として嫌われがちになっていますが、チームでシステムを作るということ特有の楽しさ、面白さもあるので、そういう部分を感じてもらえれば、将来SI業界で働きたいと思う学生も出てくるでしょう。

大手SI企業が大学に社員を派遣して、授業をするという取組みも始まっています。IT業界の社会貢献のあり方として、もっと教育現場に目を向ける必要がありそうです。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。