アルティザンエッジ合同会社を作ろうと思います

Artisan Edgeを法人にすると宣言して1週間。どういう形の法人にしようかといろいろ検討してきたのですが、合同会社にしようと思っています。
なぜ、合同会社なのか?ということについて、ここに書いておきます。

日本の法制度で、会社というと、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の4つがあります。
合資会社と合名会社は、無限責任社員が必須になるので、検討対象から外しました。
残るは株式会社と合同会社です。株式会社は誰でも知っていると思いますが、合同会社はまだ知らないという方もいるかもしれませんね。
それは仕方のないことで、2006年の会社法施行から作ることが出来るようになった、会社の新形態です。とはいっても、もう7年も経っていて、毎年5000社程度、最近は1万社近くが合同会社として設立されています。
(おそらく、日本で最も有名な合同会社はアップルジャパンでしょう。それ以外にもシスコシステムズ、西友、ユニバーサルミュージックなどがあります。こうした大企業の合同会社は、いずれも外資系企業の日本法人、あるいは日本法人相当という共通点があります。 これは、合同会社の制度化の際に参考にされた米国のLLCが米国ではポピュラーな会社形態であることと、合同会社は出資者=経営者なので本国法人の意思をストレートに反映できるという利点があるためだと思います。)

株式会社は「物的会社」と言われていて、会社をある意味で「物(というか器?)」と捉えます。出資者である株主は「会社という器」に投資する。経営者は、その器の中で(器を使って?)経営する。そういう関係になります。会社の持ち主は株主であって、経営者や従業員ではありません。

株式会社の経営者は、株主の意向でいくらでも変えられるので、気がついたら別の人が経営していたということもあり得ます。大企業などで外資が株を一定量買い増して、取締役を送り込んでくるというような話はよく聞くでしょう。
とはいっても、中小企業の場合は創業者=唯一の株主=社長ということが多いので、なかなかそういう話にはなりません。しかし、親族や知人といった創業者以外の人にも株を持ってもらう(出資してもらう)ようになると、その人が株を別の人に譲渡してしまう可能性が出てきます。そうなると、創業者も安泰というわけにはいきません。 会社法では株の譲渡に制限をかけることが出来るので、その辺もよく考えて株式会社を作れば良いわけですが・・・。

合同会社は、合資会社や合名会社と同様に「人的会社(あるいは持分会社)」と言われていて、会社を「人の集まり」と捉えます。出資者=経営者なので非常に単純。自分でお金を出して、自分で経営するということです。ある意味で、経営者以外の意向がほとんど働かない形態と言っても良いかもしれません。(より正確に言えば、合同会社でも経営に参加しない出資者を存在させることが出来ますが、定款で宣言する必要があります。)

経営のガバナンスを考えると、株主と経営者で緊張感のある関係が作れる株式会社の方が良さそうです。出資の集めやすさも、出資したからといって経営する必要のない株式会社の方が上です。銀行などから融資を受けようとすると場合も、ガバナンスの観点などで株式会社の方が良いでしょう。
そう考えると、会社を大きくしていこうというなら、株式会社しか選択肢はないと言っても良いと思います。

しかし、私があえて合同会社を選ぼうと思います。
私の作りたい会社が、むしろ合同会社という形態にこそマッチすると考えているのです。

合同会社の最大の特徴は「私がやる」という、ある種の属人性です。
ITのエンジニア、さらにはコンサルタントという職種も、属人的であると捉えているので、何よりその点で合同会社が適しています。

いままで言われてきた、セオリーのビジネス論では、「誰がやっても一定の品質を保つ組織をつくる」ことが是とされてきました。大きな組織を作るなら、それはやはり是だと思います。
しかし、エンジニアリングやコンサルティングでは、生産性が100倍以上も出ると言われます。それは実体験として頷けるところです。

そのため、大きな組織にすることが本当に是なのかという疑問が生じます。 規模が大きくなればなるほど、生産性や品質を追求する程度は現実論として下がるのではないでしょうか。感覚的に「薄まる」感じがします。
そう考えると、属人的で小さな組織として存在することは、十分に意味があることなのではないかと感じます。

私の作りたい会社は、小さなプロフェッショナルの組織です。(従業員という意味の)社員を雇ったとしても、いずれはプロフェッショナルとして独立して会社を作るなり、個人事業主として活動したりする。あとは緩いつながりを維持して、仕事の内容に応じてチームが組めれば良い。
ちょうど、コンサルタントや弁護士の「ファーム」、建築士やデザイナーの「建築事務所」や「デザイン事務所」のようなものが、エンジニアで作ることが出来れば良いのであって、私の会社はいつまで経っても「私の会社」として存在し続けることになります。

ならば、株式会社である必要はなく、むしろ「私の会社」を作れる合同会社が好適であるという結論に至ったのです。

そんなわけで、「アルティザンエッジ合同会社」を作ろうと思います。
設立に関する諸々の手続きを7月5日に行うことにしました。7月中にはすべての作業が終わるだろうと思います。
進展があったら、またこの場等でご報告いたします。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。