GitHubの日本法人設立に本当にインパクトはあるのか?

GitHubを企業で使えるか?

だいたい「日本の会社ではGitHubは使われていなくて云々」という言及があったりするのですが、そりゃそうなんです。法人は使わないよ。だって、書いたソースがオープンになっちゃうんだから。

っていうのは大いなる誤解で、ソースをクローズド(非公開)にしたい場合はGitHubを有料契約すれば良いのです。あとはオンプレミス版を買って社内サーバに立てるか。だから、今回の日本法人設立についても法人販売を担当する代理店(マクニカネットワークス)が付いているわけですね。

ただ、有料契約となると二の足を踏む企業も多いのではないかと思います。そういう会社の多くはソース管理ツールとしてGitではなく、Subversionを使っているでしょう。Subversionは無料で使えますし。Microsoft系の技術をやっている会社なら当然にVisual Sourcesafeでしょう。Gitだって、GitLab(自前サーバでGitHub的なサイトを構築出来るオープンソースソフトウェア)を使うという手もあります。

GitとSubversionの違い

そもそもGitとSubversion等では、思想が根本的に異なります。
Subversionは履歴を含むすべてのソースは中央サーバにしかないという構造で、ローカルPC上には作業コピーしかありません。さらに、Subversionはソース管理ツールであるというだけで、それ以上の機能はありません。

一方、GitはローカルPC上に履歴を含むすべてのソースを持ちます。なので、基本的なソース管理はすべてローカルPCで完結するのですが、複数メンバーでチームとして作業している場合に、その共有を図るために中央サーバが必要になるという発想です。その中央サーバとして使えるサービスの一つがGitHubなわけですね。

さらに、Gitの中央サーバの役割はそれだけではなく、編集したソースのレビュー→マージという作業がプルリクエスト(Pull-Request)という仕組みで可能になります。また、そうした機能を前提とした、Git-flowという開発ワークフローも提言されています。
こうした仕組みがあるから、GitHubがオープンソースの世界で普及したのですね。

Bitbucketあるじゃん

Bitbucket

ところで、冒頭のような記事で言及されていないこととして、Bitbucketの存在があります。
Bitbucketは豪・アトラシアン社が提供しているGitHubの競合サービスで、最大の魅力は5ユーザまでならクローズドなプロジェクトで使えことです。
当社でも、当社が関係しているプロジェクトでもBitbucketのお世話になっていて、小規模企業でクローズドなソース管理をしたいのなら、これ一択ではないかと思うのですが。。。

しかも、アトラシアン社は日本法人もありますし、日本人エバンジェリスト(伝道師)の方々が主に技術系のイベントを回っていらっしゃいます。
「5ユーザまで無料」というのは非常な魅力で、日本でも小規模企業やプロジェクト単位といった形でならそれなりに普及しているのではないかと思うのですが、どうでしょうか?

ただ、オープンソースソフトウェアの多くはGitHubで管理されていて、それをフォークして自分のプロジェクトを始める場合には、やはりGitHubを使うのが便利です。
フォークしたプロジェクトをBitbucketで管理することは可能なのですが、フォーク元が更新された場合に通知されることがないし、ソースを修正してプルリクエストを送るということも出来なくなってしまいます。

私の使い方としては、もともと公開されているものを、自分も公開することを前提に作業する場合はGitHub、クローズドなプロジェクトにしたい場合はBitbucketという使い分けをしています。

GitHub日本法人のインパクト

ということで、GitHubが日本法人を作ったところでインパクトは大してないのではないか?と思うのです。Bitbucketだってあるし、それなりの規模のクローズドプロジェクトならGitLabを立ち上げれば良いし。

ただ、GitHubにはブランド力もありますし、日本法人の設立がニュースになるくらいですから、一定のインパクトはあるという見方も出来ます。
その辺のパワーを活用して、大手〜中堅レベルのSIerにガッツリ入っていってもらうことを期待します。もしかしたら、日本にいるエンジニアの半分くらいの人には今からGitを勉強してもらうことになるかもしれませんが、Git-flowがきちんと運用されてくれば品質や生産性の向上は十分見込めると思いますので、注目しておきたいと思います。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。