Kintoneを使ったビジネスの本命はコンサルティングビジネスだろう

日本発の数少ないPaaSである、サイボウズのKintone
当ブログでも、Kitnoneの機能をオーバービューした記事を書きました。

アクセスログ等を見る限り、相応の反響をいただいているようで、注目度が高いことが分かります。

サイボウズによるKintone自体のプラットフォームビジネスはさておき、Kintone上で繰り広げられるビジネスとして、どのようなものがあるか考えてみました。

パッケージ(アプリ)ビジネス

まず考えられるのは、パッケージ(アプリ)ビジネスです。Kintoneにはアプリストアという仕組みがあるので、Kintoneでアプリを作って、アプリストアで売るという形のビジネスができます。
アプリストアを見てみると、サイボウズが無料で提供しているサンプルアプリの他に、奉行シリーズやSAPといった基幹ソフトウェア製品のデータをKintoneで使うためのアプリもあります。

サイボウズスタートアップスが提供する、Kintoneアプリと連携するWebフォームやPDF帳票の出力といったサービスもあります。これも、パッケージビジネスに含んでも良いでしょう。

アプリ構築ビジネス

もう1つ考えられるのは、アプリ構築ビジネスです。料金定額制でKintoneアプリを開発するサービス(System39)がありますし、Ruby on Railsを使った「納品しない受託開発」を行うソニックガーデンもKintoneでのアプリ構築に参入しました。Kintoneで出来るものはKintoneで作り、出来ないものはRailsで作るという方針のようです。

1アプリもしくは1システムといった単発での契約をするか、月額で継続的に契約するかに分かれます。

本命はコンサルティングビジネス

各社が行っているビジネスを見ていると、サイボウズスタートアップスのサービスを除いては、サービス単位で月額料金を設定するSaaS型ではなく、プロジェクト型もしくは月額定額型であることがわかります。

アプリストアでアプリを提供するパッケージビジネスを展開している場合でも、そのアプリを使う場合は「要問い合わせ」になっていることが多いようです。プロジェクト型のビジネスを行うための営業手段として、アプリストアが使われているのではないかと思います。

Kintoneを使ったアプリ開発は、基本的にはブラウザ上での設定で済んでしまいます。逆に言えば、Kintoneの基本機能で実現出来るアプリならば、大した工数はかからないわけで、パッケージとして売り物になるとはいえません。
基本機能で片付かない要件については、JavaScriptでの開発を行うので、ある程度の工数がかかります。そうなると、売り物になる可能性が出てきますが、純粋なパッケージビジネスとして一定規模の売上になるかといえば、まだ難しいところではないでしょうか。

Kintoneをプラットフォームとして使ったパッケージビジネスは、サイボウズスタートアップスが提供しているような、Kintoneそのものの機能を補完するもの(WebフォームやPDF帳票の出力など)でしか成立せず、業務系についてはプロジェクト型でやるしかないのではないかと思うのです。

つまり、ユーザ企業の業務をビジネスモデルとして可視化し、ビジネスプロセスを整理して、Kintoneで実現可能な情報システムに落とし込むか。そこが、勝負ポイントになります。

JavaScriptでの開発を少なくすれば、コストダウンになります。だから、ユーザ企業の競争力を落とさない範囲で、いかにKintoneの基本機能でシステムを実現するかに頭を使うわけです。
これは、開発工数を稼ぐSIビジネスではなく、コンサルティングビジネスです。

情報システムの本当の価値で勝負する

それは情報システム開発の姿として、あるべき姿だと思います。
情報システムの価値は、実際に業務の役に立ち、利益につながることにあります。開発がどれだけ大変かは、価値にはつながらないのです。1億円のコストをかけても1円の利益しか上げられないのなら、100万円のコストで1,000万円の利益になった方が良い。(SIビジネス的には100万円の売上より1億円の売上という声も出そうですが。。。)

その企業のコアコンピタンスでない業務プロセスについては、いかに出来合いのPaaS(Kintoneのような)やSaaSを使って、コストパフォーマンスの高い情報システムを作り上げられるかを問われる時代なのだと思います。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。