足し算で考えると「幅」、掛け算で考えると「深み」

昨日、ちょっと話をしていたことについて、改めて考えたことがあります。

幅と深み

私がいまAというスキルを持っていて、そこに全く違うBというスキルを学んだとします。
例えば、ITエンジニアというスキルを持っている私が、経営の勉強をするようなケースです。
その時、私のスキルは「幅が広がった」のでしょうか、それとも「深みが増した」のでしょうか。

「幅が広がった」と考えるなら、それはスキルを足し算で考えていることになります。
Aスキルが10、Bスキルが3なら、10+3=13になるという考え方です。

一方で、スキルを掛け算で考えるとどうでしょう。10×3=30になりますね。
単純に幅が広がったと考えるより、当然ですが数値は大きくなります。
この状態が「深みが増した」と言えるのではないかと思うのです。

深みが増した経験

私は学生時代、コンピュータの勉強をしていて、学校のカリキュラムに沿って情報処理技術者の資格を2つ取りました。
その一方で、たまたま私が興味を持った簿記検定と色彩検定の資格も取りました。
さらに、資格にまでは辿り着いていませんが、法律の勉強もしていたこともあります。

なんだかバラバラのような気がします。
足し算で考えたら、ただ興味が散漫な人に見えてしまうでしょう。

しかし、実際にITエンジニアとして社会に出て、仕事をしていると、有機的なつながりを見せ始めたのです。
私が企業の業務システムを作る仕事をしたのが功を奏したのかもしれませんが、業務システムを作るには会計(簿記)や法律の知識が必要になるシチュエーションは多いのです。

要件定義でお客様とビジネスの話をしていると、会計や法律の知識は前提になっていることがあります。そんなときに、私はすぐに話しについていけました。
設計をしていても、その知識があるとないでは、工数的にも品質的にも全く違った結果になります。

業務システムでも、それなりのWebデザインが必要になるケースがあるので、色彩検定もまた役立ちました。

ある場面ではITエンジニアとして仕事をし、別の場面では(副業のような形で)会計や法律の仕事をするというのでは、やはり足し算で「幅」になってしまうかもしれません。
でも、ITエンジニアという仕事を主軸に据えて、そこに別のスキルを結びつけていくようにすると、掛け算になって「深み」になるのではないでしょうか。

今の私は、掛け算で深みを作るところまでは、それなりに実践できているのではないかと思います。

新しい何かを作り出す

もう1つ、次の段階があるような気がしています。
それは、それぞれのスキルレベルを一定以上まで高めたときに、それを掛け合わせることによって、新しいキャリア像が生まれるのではないかということです。

ITエンジニアとして15年ほど過ごしているので、さすがにITエンジニアとしてのスキルは一定以上のレベルには到達していると思います。
ここ数年、経営の勉強を続けています。ITコーディネータの資格取得然り、大学(産業能率大学通信教育課程)での経営の勉強然り、中小企業診断士の勉強然りですね。経営の実践として、会社を(1人会社とはいえ)3年ほど運営もしています。

経営に関するスキルはまだまだなのですが、そのスキルをさらに高めることが出来れば、今の「経営が分かるITエンジニア」というキャリア像から、「ITと経営の分かるコンサルタント(コーディネータ)」(というと、ちょっと陳腐な表現かもしれませんが)というキャリア像に進めるのではないかということです。

それは、もちろん「幅が広がった」ではなく、もしかしたら「深みが増した」でもなく、「新しい何かを作り出した」と言えるのではないか。
そんなことを考えています。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。