IoTやAIのブームはずいぶん落ち着いてきて、継続して取り組んでいくべき技術として扱われるようになったように思います。そして、次のブームとしてやって来たのがRPAです。
RPAについては、弊社(株式会社ビビンコ)にも専門家がいますし、事業領域の一つとして掲げています。また、ITコーディネータの同期たちで定期的に行っている勉強会(ITC-Neo研究会)でもRPAが何度かテーマとして取り上げられています。
RPAに懐疑的
正直言えば、私自身はRPAには若干ですが懐疑的なところがあります。というのは、現状のRPAはまだまだ画面自動操作ツールの域にあることと、本来ならITで自動化できるであろう業務プロセスを、その業務プロセスやシステム自体に手を入れることなくRPAで自動化してしまうことの気持ち悪さです。
RPAで自動化できる領域があるということは、それほどの単純作業をわざわざ人がやっていた(それが仕事になっていた!)ということであり、その部分の業務プロセスやITシステムの見直しを怠ってきたということではないか。RPAで自動化してしまうと、そのあまり芳しくない業務プロセスとITシステムが、そのままの状態で隠蔽され、塩漬けされてしまう。それは、企業経営にITを活かすIT経営という観点からは逆行しているのではないか。
RPAの入れ方こそが重要
こうした懸念はRPAを推進している側からも出ていて「良いRPAは改善が先、ダメRPAは改善が後」といった意見も出ています。
先に業務プロセスの問題点を解消し、そのうえでRPA化するのがアプローチの基本です。従来の業務アウトソーシング(Business Process Outsourcing)も「先に改善する」というまったく同じアプローチを採用するため、アウトソーシングを得意とする企業はRPA化の提案力・実行力も高いと言えます。
その通りだと思うのです。RPAはキャッチーなキーワードであり、特に労働力不足が叫ばれている昨今(それがホワイトカラーの不足なのか?という疑念もありますが)では耳目を集めます。ならば、RPAを契機にして業務プロセスの形式知化、整理・見直しをきちんと行うという進め方もあるはずです。
AI・IoTも業務プロセスの整理から
実は、AI・IoTに関しても同様のことが言えます。私はAI研修の講師を数多く務めていますが、そこで言っているのは、AI導入には3つの壁があるということです。IoTについてもRPAについても同じことが言えるのですが・・・。
- AIで何ができるか分からない
- AIで何をすれば良いのか分からない
- AIを導入できる人がいない
まず、AIで何ができるか分からないという疑問を持つ人がいるというのは、AIがブームである故でしょう。研修ではその部分を実習を入れながら理解してもらっています。しかし、AIで何ができるか分かったといっても、(ウチの会社の)何にAIを使えば良いのかは別の話です。究極の汎用的労働力である「人」の代替となるAI(ロボット?)が存在しない以上、何に使うかを決めるのは業務プロセスを整理した上で、どこに当てはめていくのかを考える作業が必要です。
RPAからAI・IoTにつなげていく
RPAの導入を契機に業務プロセスの見直しを進めていくと、そこには人の目で見ないといけないとか、ベテランの勘と経験に頼っているという部分が出てきます。AI・IoTを入れるポイントは、まさにそこです。
AIの代表的技術であるコグニティブは、日本語に訳すと認識・認知となるように、人の目や耳の代わりをITが果たす技術です。業務プロセスの中で人の目で見ないと・・・と言う部分はコグニティブ技術によってITで自動化できるかもしれません。AIを使わなくてもIoTセンサーがあれば大丈夫かもしれません。
ベテランの勘と経験にもAIとIoTで代替できるかもしれません。勘と経験という暗黙知を形式知化して、見るべきデータ項目をIoTで収集する。判断の部分は形式知化しなくてもEnd to Endの訓練データでディープラーニングによって学習してくれる可能性があります。
RPAツール自体は、今後AI機能を盛り込む方向で進んでいくでしょう。また、RPAツールの一つであるUiPathにはWatsonとの連携機能が実装されているようです。
そうすると、RPAの導入を契機に業務プロセスの改善を行い、その上で、必要な箇所にはRPA、AI、IoTを入れていくというストーリーが見えてきます。
まずは業務プロセスから。IT導入の原則は普遍ということでしょうか。