「AIでやりました!」が実はAIを使っていないという話

Engadgetに「インドのAIベンチャー企業に「AIを活用していない」実態が発覚、ソフトバンク系も出資」という記事 が出ています。

Engineer.aiは同社の8月4日付けのブログ記事でアプリ開発でのAIの活用事例を紹介しています。それによれば、開発プロジェクトの価格設定や開発スケジュール調整に自然言語処理による解析を用いている自動で設定しているほか、依頼した開発者本人が作業をしているかの確認に顔認識技術を活用するとのこと。また、開発者が記述したコードから技術レベルを判定する際にもAI技術を用いているとしています。これに対しWSJ誌は、価格設定には旧来技術を用いているほか、開発者のレベル判定も古くからある多肢選択式問題(つまりクイズ)によるもので、AI技術は使われていないと指摘しています。

AIがスタートアップにとってのマーケティング用語になっているという話ですが、さもありなんです。AIというワードが出ていると、投資家の注目が集まるし、ライバル企業がAIに取り組んでいるという話を聞いたら、おたくはどうなの?みたいな感じにもなるという話も聞きます。

Engineer.ai社が言っているAIの要素技術(自然言語処理とか顔認識とか)は、たしかに広く使われている技術で、夢物語を言っているという感じはありません。ただ、自然言語処理ができれば価格設定やスケジュール調整ができるのか?とか、開発者が記述したコードからどうやって技術レベルを判定するのだろう?というのは気になります。

結局のところ、いまのAIは人間が教えたとおりのことしかできず、それも分類するか数値を予測するかといった程度のことができるというだけです。新たな何かを生み出すとか、人間がやっているような複雑なロジックの組み上げをAIでやるというのは難しい。

コードから技術レベルなんていうのは、人間が見たとしてもどの程度正しく把握できるのだろう?と思います。綺麗にインデントされているねとかは分かるにしても・・・。人間に分からないものは、AIにも分からないのです。(Watsonが白血病患者の薬を見つけたという事例がありますが、あれも新薬を作ったのではなく、役立ちそうな論文を見つけたというだけです。人間がやっても論文は見つかるのですが、時間がかかりすぎるのでコンピュータを使った方が速いのです。)

敢えてEngineer.ai社の肩を持つなら、当面は人間がその作業をやってデータを取っていたということかもしれません。AIに何かをさせるには、同じことを人間がやってみて、できる人間ならどうするか?というデータを取り続ける必要があります。

Engineer.ai社の件の真相は、この記事だけでは分かりませんが、昨今のAI事情を示しているとは思います。似たような話は、今後も出てくるでしょう。

この記事を書いた人

井上 研一

経済産業省推進資格ITコーディネータ/ITエンジニア。
合同会社井上研一事務所代表、株式会社ビビンコ代表取締役。
北九州市出身、横浜市在住。AIやIoTに強いITコーディネータとして活動。北九州市主催のビジネスコンテスト「北九州でIoT」に応募したアイディアが入選し、メンバーと株式会社ビビンコを創業。著書に「初めてのWatson」、「ワトソンで体感する人工知能」など。セミナーや研修講師での登壇多数。