生成AIは第4次AIブームといって良いのか

ChatGPTやStable Diffusionをはじめとする生成AIが昨年後半くらいから始まりました。それを第4次AIブームといって良いか?を考えてみたいのです。

第3次AIブームとは何だったか

2016年頃から本格化した第3次AIブームは、主にコグニティブAIのブームだったと言えます。画像認識や音声認識といった認識(コグニティブ)系のAIが、ディープラーニングを活用することで実用になったわけです。

回帰予測のAIもいろいろと実用例が出てきましたが、回帰モデルをディープラーニングで作ろうという話を除けば、それほど目新しい技術ではありません。実際、講師を務める研修の中で線形回帰の話とかをしても、特に年輩の方は「何が新しいのだろう・・・」という表情になることが多い気がします。まぁ、線形回帰の最も簡単なところだけ話しているので、なおさらなのでしょうが。

あと、第3次AIブームの火付け役となったAlpha Goは強化学習にディープラーニングを使った例で、これもコグニティブAIではありません。
実用としては、やっぱり画像認識とか音声認識だったと思います。あとは、文章の分類をしてチャットボットとか。IBM Watsonは一時期コグニティブという言葉をかなり強く打ち出していました。

コグニティブの使い道

コグニティブAIがこなすタスクは、それ自体が業務プロセスの中の何かを完全に肩代わりするようなものではありません。例外は品質検査業務を画像認識で代替することで、これは1つの業務をAIでこなす例ですが、あとは業務を構成するタスクのいくつかを自動化するということが多いのではないかと思います。

例えば、顔認識+体温測定+エビデンス画像撮影というHACCP対応向けのシステムを納品したことがあるのですが、ここでは顔認識のみがAIで、個人の特定がAIで自動化するのですが、それ以外はAIではありません。
チャットボットにおいても、ユーザーの発話内容を認識(識別)するタスクではコグニティブAIを使っても、回答はシナリオベースで準備するというのがふつうです。

もちろん、コグニティブAIも画期的です。従来型のプログラミングでは実現不可能な自動化、効率化を可能にしています。ただ、その範囲は比較的小粒であるといえます。

生成AIの登場

昨年後半くらいから生成AIがブームになってきました。画像生成ではMidjourneyやStable Diffusionが登場し、言語系ではChatGPTです。
GPT-2やGPT-3あたりからはチャットボットの回答を言語生成で行うサービスも出てきました。ただ、この時点ではまだ雑談レベルがどうにかこなせる感じでした。

それが、GPT-3.5やGPT-4が出てきて、単なる雑談生成のレベルを超えて、下記のような用途に使えるレベルになりました。

  • 添削、校正
  • 要約、翻訳
  • リサーチ、論点の洗い出し、壁打ち
  • アイディアの提案
  • ブログ記事やビジネス文書などの生成
  • プログラミング

ここまで来ると、業務1つ分くらいの大きな粒をAIがこなせます。

生成AIは第4次AIブームといって良いのか

ブームは技術レベルの向上よりも、ビジネスへのインパクトで起きるのではないでしょうか。
だとすると、生成AIのインパクトは充分です。第3次AIブームと比べて、AIがこなせる業務のサイズが大きく変わっています。

繰り返しになりますが、第3次AIブームでのコグニティブAIは「業務を構成するタスクの一部を代替、補助」するものであったのに対し、生成AIは「業務の一部を代替」するものです。これはかなりの違いです。

Developer eXperience Day 2013において、松尾豊氏が「第3次ブームから、冬の時代を経ることなく、次の第4次ブームに入った」と発言されています。その理由として、下記の2つを挙げています。

  • 2022年11月末から、完全にモードが変わった。すごいスピードで事態が進んでいる
  • ChatGPTの出現により大きく仕事のやり方が変わる。AIの「新しい時代」に入った

普段の業務でも、今年に入ってからチャットボットをChatGPT/GPT対応させる開発をいくつかやっていますし、生成AIを取り上げた研修の依頼もいくつか来ていて、対応しています。生成AIのポテンシャルを考えると、さらにしっかり取り組むべきと思っているところです。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。