ML Studio (Classic) の廃止とAzure MLへの移行について

MicrisoftのAzure Machine Learning Studio(Classic)の廃止が発表されました。といっても、廃止されるのは2024年8月31日ということで、3年後なのですが・・・。

廃止すると言っていきなり新規申し込み終了になる会社もあるので、それと比べると極めて良心的な移行計画です。だいたい、Azure ML StudioにClassicという名前が付いた時点で、いずれこういう日が来ることは予想できますしね。

新Azure MLはどうなのか?

旧Azure ML StudioにClassicという名前が付いた頃から提供されはじめた新Azure MLは、Studio Classicからの移行先として推奨されています。実際に移行は可能なのでしょうか?ここでは、同じような感覚で使えるのかを確認してみました(既に作成したモデルの移行ではなく・・・)。

実際にStudio Classicの方で作っていたモデル(自動車の価格予測モデル)を、新Azure MLの「デザイナー」で作成してみました。(Azure MLでは、デザイナー以外にNotebookと自動MLでのモデル作成が可能です。)

細かな使用感は違うのですが、Studio Classicで使っていた部品は概ね同じ名前で揃っていますし、部品間の接続も同じようにできます。Studio Classicで使っていた部品を同じようにつないで、同じようにモデルを作成することができました。

細かなことを言うと、データの閲覧画面でデータ表と基本統計量、ヒストグラムまでは表示されるけど、2つの列を選択して散布図を描くことができないのは残念だなぁとか、そういうことはあるのですが、充分移行は可能なのではないかと思いました。

料金は?

Studio Classicのメリットの一つは安価な料金体系でした。安価というか、ちょっと使う程度なら無料でした。8時間無料トライアルを使うとユーザー登録すら不要で使えるので、私のような研修講師としてはとても有り難いサービスだったのです。

新Azure MLは、まずAzureへのユーザー登録が必須です。完全に無料で使うということも無理のようです。(Azureユーザー登録から12か月間の無償枠は別として。)

しかし、実際に使ってみてそれほど高額になるということもないようです。

新Azure MLの課金体系は、Azureのサイトから引用すると下記のようになっています。

課金は 1 日単位で行われます。課金額の計算における 1 日は、UTC の午前 0 時に始まります。請求書は月単位で作成されます。

トレーニング:
例として、米国西部 2 の Basic ワークスペースで 10DS14 v2 VM を使用して 100 時間モデルをトレーニングしたと仮定します。30 日間の課金月に対し、お客様への請求は以下のようになります。
Azure VM の料金: (10 マシン * ¥133.952 マシンあたり) * 100 時間 = ¥133,952
Azure Machine Learning の料金: (10 マシン * 16 コア * ¥0 コアあたり) * 100 時間 = ¥0
合計: ¥133,952 + ¥0 = ¥133,952

推論:
例として、米国西部 2 の Basic の 10 DS14 v2 VM を使用して 30 日間の課金月に対し、終日の推論モデルをデプロイしたと仮定します。30 日間の課金月に対し、お客様への請求は以下のようになります。
Azure VM の料金: (10 マシン * ¥133.952 マシンあたり) * (24 時間 * 30 日) = ¥964,454.400
Azure Machine Learning の料金: (10 マシン * 16 コア * ¥0 コアあたり) * (24 時間 * 30 日) = ¥0
合計: ¥964,454.400 + ¥0 = ¥964,454.400

長い引用となってしまいましたが、掻い摘まんで言うと、Azure ML自体の使用料金は無料で、モデルのトレーニングや推論処理を行う時間だけ、使用するLinux VMなどの料金がかかるということです。

上記の例ではそこそこ高性能なLinux VMを100時間もトレーニンズに使っている想定なのですが、私が試したような自動車の価格予測モデルのトレーニングでは、最も安価なD2 v3タイプのLinux VMを使いましたので、料金は1時間あたり14.448円です。トレーニングにかかった時間は5分程度なので、課金単位の1時間としても15円程度。

作成したモデルを活用するための推論処理では、24時間30日の常時待ち受け体制にするなら同じタイプのLinux VMでは、14.448円×24時間×30日=10,402円と、1万円を少し超えます。ただ、Studio Classicでも同じ程度の課金になるので、そこは変わらないかと思います。(まぁ、Studio Classicでは推論処理でも開発・テスト用の無料枠があるので、やっぱりそれは魅力的ですけど。)

まとめ

ということで、私自身としてはここまで同じようにできるなら移行しても良いかなと思いますし(研修で使えるかなぁ・・・というのはいろいろ考えたいところですが)、Studio Classicと同じことができるか?という視点だけではなくて、自動MLのような機能向上もあります。デザイナーにもStudio Classicにはなかった部品が増えているようです。

Studio Classicからの移行には3年間使えますので、実務ではどんどん移行、研修では徐々に移行(新Azure MLの説明はきちんと行う)という感じで進めようと思っています。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。