プロフェッショナル原論

このブログの右側にあるサイドバーに、私のプロフィールが書いてあります。その最後のところに私のミッションが書いてあって、その一つに「プロフェッショナルとして生きる」というのがあります。
ついさっきまで、「プロとして生きる」でした。それが、この本の影響で「プロフェッショナルとして生きる」に変わりました。
「プロ」と「プロフェッショナル」。何が違うのでしょうか。なぜ、私はこの本の影響で使う言葉を変えたのか。

プロフェッショナルの本質とは、実はプロフェッショナルという言葉自体に隠されている。プロフェッショナル「professional」という言葉は、「profess」という「宣誓」を意味する言葉から来ている。つまりプロフェッショナルとは、その職業に就くのに際して神に誓いを立てなければならないほどの厳しい職業なのである。

本書には、プロフェッショナルがプロフェッショナルための条件がいろいろと挙げられています。それは、あとがきで著者が述べるように、職能を磨くテクニックではなく、「掟」。まさに、宣誓の内容なのです。
その宣誓の内容とは何か。
それは、自らの高い職能によって、社会に貢献し、公益に寄与すること。

そのために、

  • クライアント・インタレスト・ファースト (顧客利益第一)
  • アウトプット・オリエンテッド (成果指向)
  • クオリティ・コンシャス (品質追求)
  • ヴァリュー・ベース (価値主義)
  • センス・オブ・オーナーシップ (全権意識)

が、大切なのだと説いてます。

プロフェッショナルの仕事は、クライアント(お客様ではなく対等な関係)から依頼された仕事(故に案件型)に対して、クライアントの真の利益(当座ではない)を第一に考え、(コストではなく)ヴァリューを価値観の中心に据えて、とことん品質を追求して、必ず完成させることである。すべてはその成果で判断される。また、基本的に1人で完結する仕事であり、自分ですべてを決めることが要求される。チームを組んで仕事をすることもあるが、プロフェッショナルにとってのチームワークとは、仲間の仕事の進み具合を思いやることではなく、自らに分担された仕事で完璧を目指し、仲間に迷惑をかけないこと。

一息に言えば、こういうことが、プロフェッショナルの仕事のやり方であるというのです。
そうした仕事をするプロフェッショナルは、その高度な知識と技術を汎用性の高い分野で持っているため、組織に属さずとも生きていける。自分の仕事を自分で決めることができるという「自由」を得ることができます。(一方、収入は経営者などにはとてもかなわない。上の下くらい。)

そして、自らの高い職能によって、社会に貢献し、公益に寄与しているという「自尊の念」を得ることもできるわけです。
著者は、今の日本の現状を「カネで買えないモノへの興味を失っている」と感じています。そして、経済至上主義社会では、プロフェッショナルが真のプロフェッショナルとしての自由を確保し辛くなっているという危惧を持っています。
しかし、その解決策は明快です。そういう現状であるからこそ、真のプロフェッショナルサービスが求められているのであって、

プロフェッショナルはさらに自分の職能を磨き、プロフェッショナルとしての掟を一層厳しく守るのみ

というのです。また、

プロフェッショナルは弱音を吐かず、プロフェッショナリズムを全うするしか人生とキャリアの成功はない

と宣言し、今の日本では、真のプロフェッショナルが「人間は自由と誇りで幸せになれるものなのだ」ということを自らの生き方によって証明し、エヴァンジェリストになるべきだと、高い期待を表明しています。

これほどまでのプロフェッショナルへの期待の高さは、見ようによれば、誇大妄想の賜物のようにも見えます。Amazonのレビューにも上がっているように、著者自らのプロフェッショナルとしての経験を膨らませすぎているようにも見えます。
しかし、プロフェッショナルは、まず神に誓いを立てるわけです。「誓い」なのですから、そこは出来る限りの崇高を目指すべきだと、私は思います。現実はそれほど上手く行きません。7掛けもいけば、素晴らしい成果です。5掛けでも満足すべきかもしれません。現実とはそういうものだから、立てる誓いは崇高でなければならないのです。現実の世の中でも、プロフェッショナルへの期待は、本書ほどではないとしても、やはり高いのだと思います。

私も、「プロフェッショナルとして生きる」というミッションを掲げているからには、この本で描かれている崇高なプロフェッショナルを目指して、努力したいと思います。

 

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。