℃-ute(キュート)というアイドルグループをご存知でしょうか?モーニング娘。をはじめとするハロー!プロジェクト(略してハロプロ)が擁する、最も新しいグループです。
リーダーの矢島舞美と梅田えりかが最年長の高校1年生、中学2年生の中島早貴と有原栞菜、中学1年生の鈴木愛理と岡井千聖、小学6年生でハロプロ最年少の萩原舞という、ハロプロの中でも平均年齢の最も若い7人組です。
さて、なぜ℃-uteを持ち出したのかというと、起業など何か新しいことを始めるために、学ぶことがあるのではないかと思ったからなのです。
℃-uteは今年の2月にメジャーデビューシングルを発売しました。それより前にアルバムとライブDVD、さらにインディーズ扱いでのシングルも発売してはいますが、新人扱いということになっています。
全盛期と比べると低迷の色が見えるハロプロではありますが、℃-uteはデビューシングル「桜チラリ」がオリコン週間5位、2ndシングル「めぐる恋の季節」も5位、3rdシングル「都会っ子 純情」が3位と、輝かしい成績を残しています。この年末の賞レースにおいても、既に有線音楽賞、日本レコード大賞新人賞を受賞しています。まさに最高のスタートアップの年になったといえるでしょう。
1. 前もって顔と名前を知られておく
℃-uteはその若さではありますが、長い下積みを経験しています。
℃-uteの母体となっているのは、2002年に小学生を対象に行われた「ハロー!プロジェクト キッズオーディション」の合格者15人によって組織された「ハロー!プロジェクトキッズ(ハロプロキッズ)」です。
ハロプロキッズの15人のうち、8人が2004年にBerryz工房としてデビューしています。℃-uteは長らく「Berryz工房以外のハロプロキッズ」と呼ばれてきました。残り物扱いです。「2軍」と呼ばれることもしばしばでした。
℃-uteは今年時点で6年のキャリアを持っています。最年少である萩原舞は、小学1年生でハロプロキッズになり、小学6年生で日本レコード大賞新人賞まで登り詰めたわけです。
この長い下積みの間には、先輩ハロプロメンバーのバックダンサーなどとしてコンサートに出演したり、PVに出演したり、前座を務めたりしていました。そうした下積み活動によって、ハロプロファンには十分顔と名前を売ることが出来ました。デビューした時には既にファンがいる。少なくとも顔と名前は知られているという、恵まれた状態でスタートを切ることが出来たのです。
起業など何か新しいことを始める場合でも、その前にしっかり時間を取って、自分を知ってもらう活動を行うと良いのではないでしょうか。
2. 感情に訴えるストーリーがある
先に挙げたように、℃-uteの下積みは長かったのです。その間にはBerryz工房がデビューを果たし、成功を収めていました。負け組であり、2軍であった時代が長かったのです。そもそも、「Berryz工房以外のハロプロキッズ」に、℃-uteという名前が付いたとき、その名付け親であるプロデューサーつんく♂のコメントは、反響を呼びました。
で、では、Berryz工房に所属していないハロー!プロジェクト・キッズをなんて呼ぶか・・・。
いつも迷うのです。
「Berryz工房以外??」「ハロー!プロジェクト・キッズの00と00と××・・・」
これは、いかん!
ということで、グループ名を決めちゃいました。
つんく♂オフィシャルコメント「℃-ute(キュート)に関して」
なんだこれ?というわけです。
それだけに、℃-uteがメジャーデビューに向けた活動を始めたとき、ハロプロファンの一定の領域で判官びいき的な感情が沸くのは無理もありません。なんだかんだいっても、浪花節に弱い人は少なくないと思います。
弱みを強みにする。そのポイントは、いかに弱みがストーリーを持っていて人々の感情に訴えることが出来るかではないかと思うのです。それに成功したとき、弱みが強みに変わります。
3. 本格的に始める前に顧客を掴んでおく
「Berryz工房以外のハロプロキッズ」に℃-uteという名前が付いて、徐々に活動を本格化させていくことになりますが、その過程は石橋を叩いて渡るような慎重さがありました。最初はファンクラブ限定イベント、次にイベント会場限定のCD発売、全国のショッピングセンターでのイベント、先輩ハロプロメンバーのコンサートでの前座と、徹底的にチャレンジしない戦略が採られたのです。その期間は1年にも及びました。
しかし、こうしたインディーズ活動は非常に高い頻度で行われ、固定客を掴むことが出来たという点は見逃せません。
イベントの規模は徐々に大きくなり(ショッピングセンターでのイベントの総決算は、よみうりランドオープンシアターEASTで行われた)、メジャーデビューを果たし、最初のソロコンサートでは観客から万歳三唱が湧き上がり、メンバーも加わるという感動のシーンにつながったのです。
4. 先達の成功例を活かし、徹底する
℃-uteが発売したメジャーシングルには、今までのところ、すべて発売記念イベントが行われています。発売記念イベントに参加するには、シングルを購入してそれに入っている応募券で、参加権を賭けた抽選に応募しなければなりません。そのために、1人で何枚も同じシングルを購入するという現象が起きます。たしかに、セールスを上げるためのやり口としては、あまり誇れるものではありません。しかし、ハロプロに所属するアーティストでは一般的に行われていることであり、ほぼ確実に成果を残している戦略になっています。℃-uteは、その戦略を徹底して行っています。
℃-uteの場合は、同じ事務所の別アーティストの事例を活用しているわけですが、そういう身近な事例がない場合は、世の中を広く見渡して成功している人がどういう戦略を採っているのかを研究し、活用できるものは徹底的に活用するという考え方が必要なのではないでしょうか。
5. 幅の広さで飽きさせない
℃-uteは冒頭で挙げたように高校1年生~小学6年生と年齢差が大きく(特にこの世代は差を大きく感じる)、身長もまた非常に大きな差があります。キャラクターも、今すぐにでも女性ファッション誌にモデルとして登場出来そうな梅田えりかから、幼さが色濃く残る萩原舞まで、大きな幅を持っています。
最初に見ると、なぜこんなに個性バラバラな人たちが1つのグループでやっていけるのだろう…と思うほどです。しかし、モーニング娘。の初期を考えてみましょう。最年長の中澤裕子から最年少の福田明日香までの差は大きく、鼻ピアスの石黒彩から清純を絵に描いたような安倍なつみ…と、やはり大きな幅を持っていたのです。
均質化はまとまりを感じさせますが、飽きにもつながります。常に同じ色しか発信できなくなる危険があります。
その点、℃-uteのようなメンバーの幅の広さは、飽きさせない魅力となります。均質化しないことは、逆にバランスが取れることにもなります。誰かがAと言ったとしても、その正反対でZと言っている人がいれば、それはバランスです。全員がAと言って、そこに集中するよりも安定感があります。
個人のパーソナリティとして色々な引き出しを作っておくことは重要だと思いますし、組織を作る上でも面白い参考になりそうです。