「ウェブ時代をゆく」を読んだのは、発売された直後で、それこそ貪るかのように読みました。
数日何も食べていないところに現れた、白いおにぎりといった感じといえばよいでしょうか。それほどでした。
しかし、このブログに書くのがだいぶん遅れたのは、何から書けばよいか分からなかったというのが、その理由です。
メイキング・オブ「ウェブ時代をゆく」が出て、the rest of usに向けた本であるという、梅田望夫さんからの説明があって、少し見えたことがありました。
それは、the rest of usの中には間違いなく私がいるということです。
the rest of usは、何に対しての「残り」であるのか。
『ウェブ進化論』では、ネット時代を切り開いていく最先端の人たちに、がんばってやれば君たちもできるよ、ということを伝えたかった。つまり、「心で読む」読書という部分における読者層としては、一番先頭を走っている人を対象にメッセージを込めた。今度の『ウェブ時代をゆく』は、「the rest of us」に向けて書いた本なんですよ。ウェブというのは、老若男女すべての人に影響を及ぼす。そういう人たちがウェブ時代にどう生きていけばよいのか、ということを考えました。
という説明にあるように、「ネット時代を切り開いていく最先端の人たち」に対しての残りでした。
私が「ウェブ進化論」を読んだのは、前にも書いたように、ちょうど前にいた会社を辞めようと思うか思わないかくらいの時です。SEとして主にWebシステムを開発していた私は、それが同じ「Web」であるだけに、強い関連性を感じたのです。「あちら側」にいるのではないかと。何か違和感を感じつつではありましたが…。
それから2年近くが経って、やはりSEをやっていますが、会社は辞めて、フリーでやるようになり、ITとの関連はある程度持ち続けながらも別の分野に進もうと考えるようになって、間違いなくthe rest of usになりました。
「ウェブ時代をゆく」に書いてある「ウェブ時代をどう生きていけばよいのか」というのは、「けものみち」、「ロールモデル思考法」、「ウェブ・リテラシー」の3点に集約することができます。
どうやって、「けものみち」を一人でサバイバルしていくのか。それを考える上で、ネットの持つ「個をエンパワーする」力を最大限に活用するのは必須です。だから、「ウェブ・リテラシー」が必要になります。また、自分にとっての「けものみち」は何なのか。それを見つけ出す力も必要です。「ロールモデル思考法」を使ってみたらどうでしょうか。つまり、この本が語るのはそういうことです。
「けものみち」について、簡単に説明しているのは、この部分です。
「けものみち」とは、高速道路を疾走するのに比べると、まあ何でもありの世界である。好きなこと、やりたいこと、やりたくなくてもできることを組み合わせ、とくに組織に属するもよし、属さぬもよし、人とのさまざまな出会いを大切にしながら「個としてのストーリー」を組み立て、何とかゴチャゴチャと生きていく世界だ。
「けものみち」の対極にあるのは「高く険しい道」です。「高く険しい道」を進む人にとっては、「ウェブ時代をゆく」はあまり必要ないかもしれません。おそらく、「ウェブ進化論」だけあれば十分でしょう。「ウェブ時代をゆく」は、「高く険しい道」を進まない人(つまり、高く険しい道を進む人に対してthe rest of us)のために、書かれた本だから当然です。
私は、the rest of usであることを悟ったが故に、けものみちを進む決意をしているところです。ITと行政書士の業際というのは、そういうことです。昨日の「あなたが年収1000万円稼げない理由。」でもありましたが、必要なのは、「好きなこと」「興味があること」の複合技です。
「けものみちを進む」決意をしたということは、この点について、一つのロールモデルを得たということでもあります。
詰まるところ、私がこの新しいブログを立ち上げて、育てていこうとしているのは、けものみちのロールモデルの一つの実践といえます。(ブログを持つだけでは、ウェブ・リテラシーの実践とは言えそうにありません。幸い、Webシステムの開発を生業としていたり、LinuxZaurus向けのRSSリーダー&ブログエディタ「DmBlogger」を作っていただけあって、それなりのウェブ・リテラシーはあるはず。何か実践せねば…ですね。)
これからの時代にウェブ・リテラシーを持ち、サバイバルの意思を持って、リアルとネットを創造的に行き来しながら努力すれば、きっと道は開ける。ウェブは、「志」を持つ人にとって大いなる味方たる強力な存在なのだ。
ある程度知っている人にとって、この本はこれといった知識を供給するわけではありません。それよりも、the rest of usに対して、特にthe rest of usな若者に対して、「熱」と「術」を供給する本です。
私が今のところ、ここに書いている書評というか読書感想文が、要点を抜き出して、感想やそこから派生する何かを書くというスタイルです。しかし、「ウェブ時代をゆく」について書いたこのエントリーは、要点や感想というより私個人のエピソードばかり書いているように思います。それは、このブログ「自体」が、「ウェブ時代をゆく」の読書感想文だと思っているからです。「ウェブ時代をゆく」には、示唆される点が山のようにあります。折々に書き、色々な文章の中で触れていこうと思います。