ただ、一人のエンジニアとして…

今日から、新しいブログを始めることにしました。
ただ、一人のエンジニアとして、日々思うことを書いていきたいと思います。

私が職業としてエンジニアという道を選んで、もうすぐ10年目を迎えようとしています。
紆余曲折のあるエンジニア人生です。世の中にエンジニア人生の王道というものがあるかどうかは分かりませんが、もしあったとしたなら、私は明らかにその道を外れています。
ここ数年は、真剣にエンジニアという職業を離れようとしていました。

「(離れようと)していました」と、過去形になっているのは、私にとって大きな決意です。
実は、今でもまだ迷っているくらいです。
過去形には早いような気がする。でも、「(離れようと)しています」と現在進行形で書くのも違う。そういう、微妙な心境に今いるのです。
しかし、私が今、このようなブログを始めるということは、やはり少しずつ過去形にしていく過程にいるということなのだと思います。

私は、これまで王道とは程遠くとも、エンジニアとして、それなりにいろいろな経験をしてきました。離れようとしたくらいだから、「嫌だ」と思うところもあります。もちろん、嫌ばかりではなく、非常に高いモチベーションで日々の仕事に突き進んでいたこともあります。

今、私がエンジニアの道を再び進もうとして、心に留め置きたいことは、「一山いくらのSE」にはなりたくないということです。
私が今あるエンジニアというのは、ソフトウェア開発のエンジニアであって、つまりはSI業界というところに10年近く身を置いているのであって、そのSI業界というのは「3K職場」と言われたり、偽装請負に代表される人売り人買いが普通に行われている業界です。
実際、私自身、目下のところ月いくらの仕事をしている身であって、まさにそのSI業界というところに身を浸しています。

ただ、ずっとそれで良いと思っているわけではないのです。

私がエンジニアの道を離れてなろうと思ったのは、法律系の士業(行政書士)で、会社組織というものが存在せず(士業の法人というのが出来つつありますが)、一人一人の士業者がプロフェッショナルとして生計を立てている世界です。
士業の世界では、ただ資格を持って事務所を構えているというだけでは生きていけないといわれ、自分の仕事につながりそうなネタを見つけるためのマーケティングや、自分自身をどう世の中にプロモーションしていくかが広く語られています。

一方、エンジニアの世界はそれほどのことはありません。
確かに一介のスターエンジニアたちはいますが、そうでない多くのエンジニアは会社に雇われて、そこで与えられた仕事から日々の糧を得ています。没個性といわざるを得ません。(もちろん会社の中にいて大きく主張したり、会社の中と外をうまく切り分けているエンジニアもいます。)

「個の時代」ということが叫ばれて久しい昨今、IT社会の最先端にいるはずで、最もプロフェッショナルな世界で活躍が出来るはずの「エンジニア」という職業で身を立てている人々が、そんなことで良いのか?と、思うのです。

だから、私は、「ただ、一人のエンジニア」として、「一つの個」として、真のプロフェッショナルといわれる人になりたい。
そこまで思ってこそ、はじめて、私がエンジニアという道をまた進み始める理由になるのではないか…、と考えています。

このブログで、これから出会う皆様、よろしくお願いします。

2008年8月19日
六本木ライブラリーにて

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。