「Lancers」で個人間の仕事の売買がふつうな世の中が来るのか

12月16日にLancersというサイトがオープンしています。
個人間(法人も可)で、コンペ形式かプロジェクト形式で仕事を依頼し、請けた人が成果物を納品して報酬を貰うというもの。Lancersはその仲介役で、手数料を収益とするわけですね。
コンペ形式は、成果物を先に出して、依頼者の気に入ったものを買い取ってもらう形式。
プロジェクト形式は、提案書を出して、依頼者の気に入った人に仕事を依頼する形式。

オープンした時から、どうなるかな…と、ちょくちょくサイトを覗いていたのですが、それなりに依頼も提案もされていて、順調に滑り出しているように見えます。

依頼されている仕事の内容は、Webデザインやサイト構築、ロゴ制作といったものが多いようです。
中には、単なる質問もあって、それは「人力検索はてな」でやれば良いのでは?と思うものも。

気になるのは、プロジェクト型の場合で、納期が守れなかったり、納品物に瑕疵が発見された場合の責任関係はどう処理されるのだろう…ということです。数千円でやりとりしているのならまだしも、数十万円といったレベルになってくると、いろいろ問題が起こることもあるでしょう。
オークションなら代金を振り込んだのに商品が届かなければ、保険で代金が返ってくるということもあるようですが、Lancersは報酬後払いが前提。それよりも、売買するものが「商品」ではなく、価値が測りづらい「仕事」である故に起こる問題の方が不安なわけです。
ちなみに、報酬未払いについては、Lancersが報酬を一時預かりする方法で対処されているようです。

こういうサービスが一般化して、それで生計を立てる人が出てくるようになると、こうした分野の法律問題に携わる法律家の必要性が出てきますね。弁護士に依頼するほどではないでしょうから、簡裁での代理権を持っている司法書士や、予防法務の観点で請負契約に詳しい行政書士の出番ということになるかもしれません。プロジェクト形式では、個人間とはいえ、ちゃんとした契約書を取り交わした方が良いと思います。

あと、個人間でやるということで、報酬が安いかなという印象もあります。CMSを使ったサイト構築が5万円とか、安すぎでしょう。ちょっとしたお小遣いとしての5万円なら良いと思いますが、これを業者に頼んだら10倍、100倍になりかねないわけです。それを「業者ボリ過ぎ」と言ったら元も子もないですが、やっぱり5万円は安いんじゃないかなぁ。
百歩譲って、サイト構築のビジネスをやりたい起業家の卵A君と、ショッピングサイトをやりたい起業家の卵Bさんが出会って、とりあえず5万円で上手くやれて、その後もっと大きなお金が動くような関係が築けるとかなら、いいかもしれない。

まぁ、いろいろ思うところはありますが、Lancersのようなサービスの登場を嬉しく思う人は少なくないはず。私も、成功して欲しいと思います。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。