SIerにとってのWeb2.0

私は、これまで、Web2.0とは何のことか…というテーマで考えてきた。
また、コンピュータというものの存在意義についても、考えてきた。

その回答は、すぐに出るほど簡単なものではないが、今のところの回答は、このようなものである。
まず、コンピュータについては、「人類の能力を増大させる装置」であるということだ。
能力を増大させる方法は、いろいろとある。個々の人間なり組織が処理すべき情報を、データとして高速に処理することで、人間が考える時間を得ることが出来るし、考えるための情報源も、大量のデータを処理した結果から、質の高い情報を得ることが出来る。
また、コンピュータは別のコンピュータとつながる性質を持っている。そこでは、人間と人間、組織と組織が出会う場所や、コラボレーションする場を、コンピュータが生み出している。もちろん、コラボレーションは、人類全体としての能力増大につながる。

Web2.0についても、基本的にはコンピュータの存在意義の系譜にある。
Web2.0の本質は、とにかくデータとデータをつなぐこと(あとは、そのデータソースが広範であること)だ。
前者の、データの大量かつ高速な処理は、既に前提になっている(その高速処理能力がチープになったこともポイントだ)。Web2.0では、後者の「つながる性質」にフォーカスが当たっている。要するにマッシュアップであり、マッシュアップの前提となるXML濃度の高いWeb世界が構築されることになる。
Web2.0単体をビジネスの観点で見ると、そこにはアテンションエコノミーが存在していて、広告費を収入源とするビジネス、つまりメディア事業が行われている。

SIerというのは、System Integratorだとか、Service Integratorだとか、果てはServer Integratorだとか、いろいろと意味があるようだが、結局のところは、IT絡みの何かしらを、顧客の要求に応じて、構築代行するビジネスである。
そもそも顧客自身では要求が上手く出来ないでしょ、とか、顧客自身も気づいていない要求が隠れてるでしょ、ってことで、SIer起点のコンサルティングビジネスが勃興したりする。あらかじめ一部を構築しておく、レディメイドスタイルだと、パッケージビジネスになる。構築した後の運用も必要だから、SIerと運用代行は隣接している。その他、いろいろとビジネスの幅を広げているが、ベースとなっているのは、構築代行だ。つまり、それがSIerのコアコンピタンスなのである。

上述のとおり、SIerは「顧客の要求に」応じる、受け身スタイルのビジネスが基本だ。
ということは、Web2.0をビジネスとする場合のアテンションエコノミーには、SIerは乗らないということになる。受け身である以上、SIer自身がアテンションを集める必要はないし、あくまでSIerの既存ビジネスのライン上では、アテンションが集まらないだろうからだ。

と、いうことは、SIerはWeb2.0に乗る必要はないということか?
それは、違うと考えている。
数年前、XMLブームの時に、XMLがビジネスになるかどうか議論が盛んに行われた。
結果、XMLは大したビジネスにはならなかった。しかし、XMLは確実に普及したのである。それまでの、プロパティファイルやCSVデータといったパラダイムをチェンジして。
つまり、XML自体はビジネスにならなかったが、XMLは既存技術を確実に変える力は持っていたし、それはSIerにも確実に影響を与えたのだ。
Web2.0も同じなのである。それ自体のビジネスはメディア事業に限定されたとしても、既存の技術やシステムを、確実に変えていく。
そこには、SIerも乗っていくべきなのである。

この記事を書いた人

井上 研一

経済産業省推進資格ITコーディネータ/ITエンジニア/ブロガー。
井上研一事務所代表、株式会社ビビンコ代表取締役、一般社団法人ITC-Pro東京理事。
北九州市出身、横浜市在住。 AIやIoTに強いITコーディネータとして活動中。著書に「初めてのWatson」、「ワトソンで体感する人工知能」など。セミナーや研修講師での登壇も多数。

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