飯尾氏は「学生や若手エンジニアはとにかく自分でスキルを磨いてほしい。そのことで、楽しい人生を送れるチャンスはほかの業界よりもある」と話す。「まずは自分が取り替え可能な人間かどうかを考えるのが非常に重要。取り替え可能なうちは幸せになれない。取り替え不可能な人間になってほしい」と技術者に期待する。
こういう記事が出るのはとても良いことだと思う。
構造上の問題を抱えた古いSI業界をさておいて、外の世界に飛び出していく。それが、今のところIT業界を楽しいと思ういちばんの近道だと思う。
しかし、それが出来るのはスキルを磨いた「本当の技術者」に限られるのではないか。
IT業界というのは基本的に技術者がすべての業界(のはず)。技術にもいろいろあって、故に技術者にもいろいろあるが、何にせよ「IT」というものに惚れて、そのスキルを高めていく技術者に対して福音がもたらされるようになるのは、結構なことだ。
ただ、SIerという種類の会社の中で(良くも悪くも)「仕事が出来る」人は、必ずしもそういう典型的な「IT」技術者ばかりではない。 例えば、顧客との調整ごとが上手いとか、いろいろ話を聞きだしてくるとか、手際よく設計書をまとめるとか、メンバーを率いる統率力があるとか、後輩を教えるのが上手いとか、上司を説得するのが上手いとか、果ては下請を叩くのが上手いとか云々。そんなことは、SIerで働いたことのある人なら、みんな知っていることだろう。
ただ、そういう、純粋な「IT」という技術とはちょっと違ったところの能力を持ってSIerで働いている人にとって、SIerやSI業界たるものの外に出て行くというのは難しいのではないか。
今のところ外に出て脚光を浴びている人というのは、「アイディアを持っていて、それを何らかのソフトウェアとして形に出来る人」だ。要はデキるプログラマな人たちなのではないか。
SIerには「プログラムなんてしばらく書いてないよ」という人がいっぱいいる。書きたいけど組織の都合上、書かせてくれないという人もいるだろうし、書きたくないなぁと思っている人もいるだろう。
でも、彼らもIT業界で働く技術者には違いない。プログラムしない彼らは、実は技術者ではないのだろうか?(私は、そういう人は「エンジニアっていうかSE?」みたいな。そういう風に思っている。いや、SE=ソフトウェア・エンジニアなのだが、なんかエンジニアっぽくないSEというか。おそらく、ソフトウェア・エンジニアではない「SE」という職種があるのではないか。ちなみに、自分を含む。)
そういう人にとっても、IT業界が本当に楽しいと思えるのはいつになるのだろう?(そういう人が幅を利かせているからダメとか、そういう話?)