会社における内部と外部の衝突関係

法律というのは、たいてい誰かと誰かの衝突関係を解決するためにあります。だから、会社法でも誰と誰が衝突しているのかを理解することが大切です。

会社の内部的な衝突関係

まず、内部的な衝突関係として、所有者と経営者の衝突があります。

株式会社では、所有者は株主であり、経営者は取締役です。つまり、経営者は他人の出したカネで会社を経営しているのであり、所有者である株主は自分のカネで経営させているわけだから、相互の衝突関係というか、カネを出しているほうの干渉は必ず出てくるわけです。
それをどう担保するかという視点で、機関設計が重要になってきます。

カネを出している方は監督・監査をきちんとしたい。これは、株主の共益権というやつです。だから、いろいろな部分で株主総会の決議を求めます。
ただ、公開会社は株主が多く、入れ替わりも激しいので、何でも株主総会の決議を求めると、会社の経営が非合理的になってしまう。そこで、株主総会での決議事項を会社法と定款で定めた事項に留め、かわりに取締役会を必ず設置して、取締役間の監督機能を強化したり、監査役・監査役会も必ず設置したりして、株主総会の権限を抑制した分の監督・監査機能を担保するわけです。

一方、持分会社では、所有者=経営者なので、機関設計は重要ではありません。衝突関係がないので、当然です。

会社の外部的な衝突関係

会社の外に目を向けると、会社と会社債権者の関係が重要です。
会社形態には無限責任社員のいる会社形態(合名会社・合資会社)といない会社形態(合同会社・株式会社)があります。
無限責任社員のいない会社形態では、会社債権者は会社財産しかあてに出来ないので、会社財産がどれだけあるかの一定の基準である資本金が重要になってきます。

資本金には「資本充実・維持の原則」、「資本不変の原則」というのがあります。前者は定めた資本金はちゃんと実現していなければならないというものであり、後者は一度定めた資本金は簡単に減らしてはいけないというもの。

「資本充実・維持の原則」は、ゼロから会社の資本金を積み上げていく「設立」において重要になってきます。

「資本不変の原則」は、設立された後の話になりますが、この時点ではすでに会社債権者が存在することになるので、資本減少を行う際には会社債権者に通知する必要があり、会社債権者は異議を述べることが出来ます。異議を述べた結果、会社が対応しなければ、弁済を求めるという流れです。ところで、会社債権者にとっては、資本が減るのはマズいけど、増える分には良いのです。大歓迎です。

一方、(これは会社の内部関係になりますが)株主にとっては、増えても不都合があります。資本を増やす分を既存株主に割り当てるのならば良いとしても、第三者に割り当てるとなると、自身の持株比率が低下してしまいます。よって、(基本的には)株主総会での決議が必要となります。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。