この不景気についての企業トップの認識は、「景気が上向いたときに広がっている景色は、いままでとは全く違うものになっている」ということのようです。
今回のサブプライム問題に端を発する景気の悪化は、単なる景気循環によるものではなく、構造的な問題に起因しています。その不景気から立ち直るには、構造的な問題を解決するしかありません。
今日の中外時評では、まずダイエーの創業者である中内功氏の言葉を引いています。
故中内功氏が社長の時に、信条を尋ねたら「そんなものはないよ」と素っ気なかった。重ねて聞くと、強いて言えばいう感じで「変化対応だな」と答えた。
中小企業診断士の勉強をしていても、「経営で肝心なのは変化に対応することである」という話が出てきます。なにが変化するのかというと、景気、政治・政策、国際問題、環境問題といったマクロな変化から、消費者の好み、競争相手の戦略、取引先の戦略といったミクロな変化まで、いろいろあります。この変化を敏感に感じ取って、機敏に対応することこそ、経営の諦要であるというわけです。
変化対応の重要性は、これからは変わることはないでしょう。しかし、今後はさらに高いレベルが要求されてくるようです。
「『トンネルを抜けると雪国であった』という小説の通りなら、春が来れば草木がまた生えてくるだろうが、『北極』と考えた方がよい。スキやクワを捨てて、弓矢をとってアザラシを追わなくては駄目だ」。旭化成の蛭田史郎社長は発想の転換を説く。
変化したことをどんなに速く感じ取って対応したとしても、それは所詮後追いに過ぎず、といって、どう変化するかも予測できない。そのような厳しい環境に置かれるのが次のゲームのバックグラウンドだとするならば、その勝者となるのは、どのような人、企業なのでしょうか。
例えばGoogleのように、自ら変化を起こす企業が思いつきます。10分散髪というブルーオーシャン戦略で成功したQBハウスもあります。変化を予測できないのならば、自らが変化を先導し、先行者利益を得る。
しかし、「自らの変化」が市場に受入れられなければ、「市場の変化」にはなりません。そのために市場研究が重要です。ただ、市場研究も一歩間違えば、市場変化の後追いになってしまうというジレンマがあります。ならば市場研究を捨て、数打ちゃ当たる作戦を採るのも、ネットサービスのように初期投資が少ない事業では有効かもしれません。
私は、自分自身の信念が重要ではないかと思います。Googleの「世界中の情報を遍く整理する」という信念は有名ですが、そのような変化を巻き起こす信念です。
拙速に変化を追うことをせず、変化を巻き起こすような信念を持って、その信念に基づくサービスを粘り強く多角的に提供していく。それこそが、真の変化を生み出すのです。
生産性が高い産業ほどフォロワー戦略は取れないのです。新しい発想で市場のリーダー(市場規模や資本力、展開するサービスの幅によってはニッチャーと呼ばれるかもしれませんが・・・。ニッチャーはセグメントを区切った上でのリーダーです。)になれない限り、勝者にはなれません。
ゲームのルールは変わったのだということを悟って、新しい発想で行動できる人、企業が勝ち残る時代が始まっています。