応用情報処理技術者試験と中小企業診断士試験

今日は応用情報処理技術者試験と中小企業診断士試験のカリキュラムの相違点を検討していた。というのは、一昨日、会社のユニットミーティングで今年の目標を発表したときに、その一つとして何か資格を取りたい(私自身としてはいつも言っていることなのだが)を言ったからで、その候補としてシステムアーキテクト試験か中小企業診断士試験を挙げたのだ。

システムアーキテクト試験(SA試験)は情報処理技術者試験の中では秋に実施される試験とされている。では、直近で春に行われる試験のうちめぼしいものは?といえば、応用情報処理技術者試験(AP試験)がある。SA試験はITSSにおけるITアーキテクトのレベル4にほぼ該当している。AP試験はレベル3でまんべんなくといった感じだ。ちなみに、AP試験の合格者はSA試験などのレベル4の試験で午前Iが免除されるという特典がある。

中小企業診断士試験は、経営コンサルティング分野の唯一の国家試験であり、難易度の高い試験だ。1次試験は毎年夏に行われ、企業経営理論、運営管理、財務会計、経営情報システム、経営法務、中小企業経営・政策、経済学の7科目で構成されている。AP試験の合格者は経営情報システムが免除されることになっており、AP試験のIT分野におけるオールマイティさが際立つ。

で、とりあえず直近はAP試験を目指しつつ、その後で中小企業診断士試験か、SA試験などの情報処理技術者試験のレベル4資格に進むのがよいのではないかと考えた。AP試験は春、中小企業診断士試験は夏だから、内容にかぶる部分があれば良いなぁと思いながら、突き合わせをやってみた。

その結果、AP試験と中小企業診断士試験には共通点が多いことが分かった。

AP試験テクノロジ系

中小企業診断士試験の経営情報システムの全般が該当する。内容はAP試験の方が深い。

AP試験マネジメント系

中小企業診断士試験には該当科目がない。

AP試験ストラテジ系

経営戦略、技術戦略については、中小企業診断士試験の企業経営理論の経営戦略論の全般と、マーケティング論の一部が該当する。
ビジネスインダストリについては、運営管理の生産情報システムと販売流通情報システムが該当する。
企業活動については、企業経営理論の組織論、運営管理の生産管理概論の一部、財務・会計の一部が該当する。
法務については、企業経営理論の労働関連法規、経営法務のうち起業や資本市場へのアクセスを除く部分が該当する。

AP試験のテクノロジ系とマネジメント系(プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント等)は、エンジニアの方が専門であり、AP試験の方が深い。ストラテジ系はコンサルタントの方が専門であり、中小企業診断士試験の方が広く深い。しかし、AP試験でも企業経営理論と経営法務に関しては広く問われており、財務・会計や運営管理についても業務知識として一部が問われている。

AP試験では現代のエンジニアに必要と思われる知識が広く薄く問われる。さらに上位の試験では問われる範囲が細分化していくことを考えると、エンジニアに必要な知識の幅としては、少なくとも試験で問える範囲としては最大と考えられる。テクノロジ系に重心を置きながらも、マネジメント系やストラテジ系の知識が問われるのは、そうした知識がなければ真に必要な情報システムとは何なのか、きちんと価値を提供できるのかが分からないからだろう。

中小企業診断士試験の側から見ると、経営情報システムを除いては知識の深さについては当然足りないのだが、幅に関していえば、AP試験は侮れない。それだけ、いま求められているエンジニアは、コンサルティングの領域にかなり近づいているということだ。

こうしたことを考えると、いま私がやるべきことはAP試験のカリキュラムをインデックスとして、その範囲での知識を深めることではないだろうか。AP試験に合格できるというレベルではやはり浅い。ただ、インデックスとしてはかなり有用なのだから、たとえばそれぞれの分野で専門書を1冊ずつ読んでいくといったことをすれば良いのではないだろうか。そうすれば、エンジニアとして一本の軸ができるのではないかと思っている。

最初はAP試験から中小企業診断士試験へと思っていたのだが、すぐに中小企業診断士試験まで進むのは性急かもしれない。それよりも、まずはエンジニアとしての自分の軸を確実に作るべきだと思うのだ。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。