アメーバピグのFlashバージョンアップ問題に暗澹とする

サイバーエージェントが運営する仮想空間サービス「アメーバピグ」がこのほど、推奨動作環境のFlash PlayerのバージョンをVer 9以上からVer 10.1以上に変更したところ、バージョンアップできずピグが使えないというユーザーが続出。「アメーバスタッフブログ」に不満を訴えるコメントが1000件近く投稿される“炎上”状態になっている。
引用元: ねとらぼ:「アメーバピグが使えない」 動作条件変更に混乱のユーザー殺到、スタッフブログ炎上 – ITmedia News.

この記事を見て暗澹とした気分になってしまいました。

たしかに最初にFlashのバージョン変更の告知をしているAmebaスタッフブログのエントリーもどうかなと思います。もう少し詳しく説明しておくべきではないかと。どうせ、読まれないだろうけど。ただ、保険をかけておくという意味で、炎上にはならないか、炎上してもボヤで済んでいたかもしれないとは思います。

Amebaスタッフの気持ちも分からないではありません。それまでの推奨だったFlash9がリリースされたのは2006年6月で、5年近く前です。今回の推奨であるFlash10.1のリリースは2010年6月で、既に1年近く経っています。それだけ経っているのだから、もうほとんどバージョンアップされているのではないかと思うでしょう。それならば、そんなに大騒ぎにならないだろうし、告知もこの程度で良いだろうと。しかし、AmebaユーザのITリテラシはスタッフの想定より低かったわけです。Amebaは芸能人を大量起用してITリテラシの低い層にグイグイ売り込んでいるサービスなのだから、スタッフの想定が甘かったのでしょう。

Amebaピグの特異性を挙げるならば、ピグの使用そのものは無料ながら、ピグ(アバター)の洋服や部屋のインテリアなどは有料で取引されていることです。そうしたアイテムの取引時点では現金が動かず、前もって「アメゴールド」と呼ばれる仮想通貨を手に入れる時点で現金が動きます。つまり、商品券のような前払いのシステムなのです。ソーシャルゲームでは一般的なやり方ではあります。

逆にピグの使用そのものが有料でアイテムの取引は無料だとすれば、これほど大きな問題にはならなかったのかもしれません。使えないと分かったら、だまって解約するのみだからです。使うからお金を払う、解約したからお金は払わない。これはスッキリする方法です。しかしソーシャルゲームはそうではありません。アメゴールドの入手に際してAmebaに前もってお金を預けているのだから、急にそれが使えなくなると、Amebaにお金をかすめ取られたような気分になってしまいます。今回の問題はただFlashのバージョンを上げたというだけです。それが炎上につながるという事態に暗澹としているのですが。

それがソーシャルゲームのビジネスモデルです。いわゆるフリーミアムモデルで、ピグの使用自体が有料だとすればユーザは集まらず、ビジネスとして成り立たないに違いありません。ビジネスを大きくしようとすれば、一般層に食い込もうとするのも当然の話です。

今後、こうした炎上はそこかしこで起こる可能性があります。それだけWebサービスが普及したということですが、世の中を騒がせているクレーマー問題などもWebサービスの世界にやって来るのでしょう。そのうち消費者庁が動き出して、Flashバージョンアップのガイドラインを作るといったこと笑い話のようなことが、起きるかもしれません。

Webサービスの提供会社は、へこたれないコールセンターと腕利きの弁護士を雇っておいた方が良いのかもしれません。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。