スポーツ基本法の成立と総合型地域スポーツクラブ

今日の参院本会議において、スポーツ基本法が成立しました。
人類固有の権利として「スポーツ権」を確認したほか、スポーツ庁の設置についても触れられています。また、競技力の向上や地域スポーツの振興を国の責務として明確化しました。

スポーツ基本法は、成立から50年が経過したスポーツ振興法を置き換えるものです。スポーツ振興法は東京オリンピック開催を控えて根拠法令として制定されたもので「営利のスポーツを振興するものではない」という記述があるなど、現代に則したものとはいえないものになっていました。

スポーツ振興法のもとでは、2000年に文部科学省がスポーツ振興基本計画を立案(2006年に改定)し、2001年から2010年までの10か年計画で、子どもの体力向上、地域のスポーツ環境の整備、国際競技力の向上を図りました。

地域のスポーツ環境の整備では、2010年までに全国の各市区町村に少なくとも1つは総合型地域スポーツクラブを、各都道府県に1つは広域スポーツセンターを育成することを目標としていました。総合型地域スポーツクラブについては、将来的には中学校区程度の地域毎に定着させていくことを目指しています。

総合型地域スポーツクラブとは、民間のフィットネスクラブ、スポーツクラブ等とは異なり地域住民が主体となって運営します。NPO法人化しているケースも多いようです。「総合型」と謳っているだけあって、多種目、多世代、多志向でのスポーツへの参加が可能となっており、費用は会員(住民)負担ですが2,000~3,000円程度など民間より相当安価です。主に小中学校のグラウンドなどを使い、住民自身がコーチになっているケースが多いようです。

2010年7月現在、総合型地域スポーツクラブは全国に3,114あります(創設準備中を含む)。その数を見ると定着したようにも見受けられますが、例えば東京都では八王子市に20以上あるにも関わらず、多摩市には1つもないなど、バラつきが見受けられます。

練馬区には7つの総合型地域スポーツクラブがあり、現時点で6つのクラブがNPO法人化しています。この7つのクラブは「ねりまSSC」として共同歩調をとっており、Webサイトも共通化されています。Webサイトでは「ねりまSSCは都市型の総合型スポーツクラブを目指しています」と明記されており、先進事例の1つとして参考になるのではないでしょうか。

ITとの関わりにおいては、スポーツ振興基本計画において主に地方公共団体の責務として、「インターネットを活用して、スポーツ情報に関するホームページを開設するなど、地域住民がより簡便な方法で情報を入手できるシステムを構築することが期待される」と記述されています。住民がスポーツをしたいと思ったときに、的確に情報が入手できる方法として、ITが期待されているわけです。

東京都の総合型地域スポーツクラブを見てみると、約半数が独自のWebサイトを持って情報公開しています。中にはココログ等のブログだけというクラブも見受けられます。

国の助成金などの施策による設備の充実が期待されます。しかし、2009年の事業仕分けにおいて総合型地域スポーツクラブへの国の助成はtotoとの重複が指摘され、大幅な削減が必要という結論が出ました。

今回、スポーツ基本法の成立で国の責務が明記されたことから、再び何らかの施策が始まる可能性があります。財源難は誰もが知るところですが、膨張を続ける医療費の削減につながることにもなりますから、必要性はあるといって良いでしょう。その際、官主導の総合型地域スポーツクラブだけではなく、民間のフィットネスクラブ、スポーツクラブ等も検討の対象に加えるべきではないかと思います。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。2018年、株式会社ビビンコを北九州市に創業。IoTソリューションの開発・導入や、画像認識モデルを活用したアプリの開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。