CRM基礎講座 第5回 RFM分析

第4回でCRMは顧客第一主義とは違うものだと書きました。いちばん追加的な利益をもたらしてくれそうな人に重点的にサービスコストをかけます。では、それは誰なのでしょうか。第2回で説明した顧客の育成ステージは判定基準になります。それはどうやったら分かるのでしょうか。CRMで顧客の情報を蓄積していれば、良い方法があるはずです。今回は、サービスを重点的に行うべき顧客を判定するための代表的な方法であるRFM分析について説明します。

RFM分析とは、Recency(最新購買日)、Frequency(購買頻度)、Monetary(購買金額)の3つの指標を使って顧客を分類する手法です。例えばそれぞれの指標で3段階の分類を行ったとすると、3×3×3で顧客を27種類に分類することが出来ます。5段階なら75種類、10段階なら 1000種類になるわけですが、あまり細かく分類し過ぎてもそれに沿ったサービスが提供できるわけではありません。せいぜい3〜5段階が妥当ではないでしょうか。

3段階で分類したとして、Recencyが3、Frequencyが3、Monetaryも3の顧客は最上級の顧客ということになります。これを [3,3,3]と表現することにしましょう。[1,1,1]の顧客はもっとも自社の利益に貢献していない顧客ですから、場合によっては切り捨ても考えます。[3,3,1]だと最近何か買ってくれているし頻度も高い有望な顧客ですが、いかんせん購買金額が低い。打つべき施策はクロスセリングやアップセリングといった購買金額を上昇させる施策です。[1,3,3]は購買頻度が高く購買金額も高い優良顧客ですが最近は足が遠のいているようです。ならば、ダイレクトメールを送ってみるなどして来店を促す施策を打ちます。

このように分類していくと、どの顧客にどのような施策を打つべきかが見えてきます。こうした分析が出来るのは、CRMシステムなどを用いて顧客を識別し顧客の購買履歴やプロフィール情報を溜め込んでおいたからこそ出来るのです。

ところで、[3,3,3]の顧客と[2,3,3]の顧客がいたら、どちらにコストをかけたサービスを行うべきでしょうか。いつも大変なお世話になっている [3,3,3]でしょうか。正しいと思われるのは[2,3,3]です。[3,3,3]の顧客に追加的なサービスをしても利益の積み上げ効果は期待薄です。それよりも[2,3,3]の顧客にサービスして[3,3,3]になってもらうことを考えるのです。

また、同じ[2,3,3]である2人の顧客がいるとします。その顧客の履歴を振り返ってみると1人は[1,3,3]から[2,3,3]になったのであり、もう1人は[3,3,3]から[2,3,3]になったのだとしたら、その2人の顧客には同じ内容のサービスをするべきでしょうか。状況にもよりますが、一般的には別のサービスを行うべきでしょう。自社のサービス予算と見比べた結果、[1,3,3]→[2,3,3]の顧客を優先するといったことも考えられます。RFM分析においては一時点でだけ分析するのではなく、連続した二時点での座標の移動を考慮することも重要です。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。