エンジニアリングスキルとビジネスマインドを持ち合わせる

エンジニアとしてきちんとモノを作ることができるエンジニアリングスキルを持つことと、何のためにそのモノをつくり、どのようにつくったモノから価値を生み出していくかを考えるビジネスマインドを持ち合わせることは、Artisan Edgeにおける私のテーマです。

少なくともArtisan Edgeにおいては、片方ではダメだと思うのです。小さくても良いから、その両方をきちんとやっていきたい。
それは、iPhoneアプリやWebサービスのローンチという形で自らが発信源となることでも良いし、企業や団体のIT戦略を作り上げ、実践に移していくことを、その企業や団体のメンバーと一緒にやっていくということでも良いのです。

こういう私の考え方は、いつから始まっているのだろうと振り返ってみると、私が社会人になって2年目だった2001年7月に、当時やっていたWebサイト(ブログといったものはまだなかった)に、こんなことを書いていました。

Webサービスの開発の場面では、エンジニアはビジネス感覚が必要です。Webサービスはビジネスロジックを定義し、ASPのような供給形態になり、取捨選択の対象となります。ここで「捨」の方になってしまえば、ビジネスはあがったりです。もちろん、その企画や営業のすべてをエンジニアが行うわけではないとしても、ビジネス感覚を持ったシステム開発が必要になると考えられます。

ここでWebサービスといっているのは、当時の最新技術であったSOAPをベースにするWebサービスのことです。当時は、アプリケーションプロバイダが様々なWebサービスを提供して、企業システムではそれをSOAPで繋いでいって、一つのシステムを作り上げるといった考え方が流行っていたのです。(現在では、SOAPよりももっと軽いRESTであったり、あるいはSaaSのような形で実現しています。)

そして、そういうWebサービスの世界に打って出るには、ビジネスマインドを持ったエンジニアが必要になるだろうと、当時21歳の私は考えたのです。

さらに、このように続きます。

ところで、オイコノミコスという言葉があります。ギリシア語で「共同体のあり方」を意味します。エコノミクス(経済)の語源と言われています。つまり経済とは社会(共同体)のあり方を考えることでもあるのでしょう。
Webサービスはシステムの構成はもちろん、ビジネスのやり方にも変革を与える、非常に大きな影響力を持った技術です。エンジニアは、ビジネス感覚を超え、社会のあり方についても想いを巡らせることを考えるべきです。

ビジネスの枠を超えて、社会のあり方にまで言及しているあたりが若さを感じさせるような気がしないでもないのですが、30台の半ばが見えつつある今の私ならば、なおさら、こうしたことを考えねばならないのでしょう。

Artisan Edgeは少しずつ動き始め、社会の中での存在を少しずつ明らかにし始めています。
この動きを止めず、2001年の私が考えていたことを、考えるだけでなく、実践に移したいと思います。

この記事を書いた人

井上 研一

株式会社ビビンコ代表取締役、ITエンジニア/経済産業省推進資格ITコーディネータ。AI・IoTに強いITコーディネータとして活動。画像認識モデルを活用したアプリや、生成AIを業務に組み込むためのサービス「Gen2Go」の開発などを行っている。近著に「使ってわかった AWSのAI」、「ワトソンで体感する人工知能」。日本全国でセミナー・研修講師としての登壇も多数。